【はじめに】乳がん術後や透析シャント造設している患者の場合、輸液をしている上肢から採血しなくてはならない場合がある。しかし、輸液をしている側の肘窩部は輸液ラインを確保している前腕から高濃度の輸液が流れ、そのまま採血するとデータが不正確になる。そのため、輸液をしている上肢の肘窩部は採血部位として選択されてこなかった。しかし、課題番号16K20717の研究により輸液を一時的に止めることで輸液の影響を受けずに採血できる検査項目があることが明らかとなった。肘窩部は神経損傷などのリスクが少ない採血部位であり、輸液をしていても肘窩部を選択できるメリットは大きい。だが、採血終了後に血管を穿刺した部位に高濃度の輸液が流れることで採血部位周辺に血管外漏出を起こす危険がある。輸液の影響を受けない血液検体を採血することができたとしても、採血後の安全性を確かなものにしなくては臨床応用できない。そこで、本研究では採血部位を圧迫止血しながら輸液が流すことで血管外漏出の予防となるかを検討した。 【研究方法】①ラットの尾静脈から7.5%ブドウ糖とアミノ酸を含む輸液を0.5mL流す。②輸液を止めライン確保部位より中枢の静脈に注射針で穿刺し採血部位に見立てる。③実験群は採血針の抜針後に圧迫止血しながら輸液を0.5mL流す。コントロール群は圧迫止血せず輸液を0.5mL流す。④24時間後に尾を10%ホルマリン液で固定し、HE染色を施し組織標本を作製した。その後、光学顕微鏡で標本を観察し血管外漏出の有無を観察した。 【結果】圧迫止血せず輸液を流した群は50%(6/12)で血管外漏出が観察されたが、圧迫止血した群は7.7%(1/13)で、リスク比は6.49倍であった。また、クロス集計表を作成しカイ二乗検定を行ったところ有意確立は0.037で、圧迫止血を実施することで有意に血管外漏出を予防することが明らかとなった。
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