本研究は、臨床場面における患者-看護師コミュニケーションに関する基礎研究である。臨床場面における患者の訴えの中で、「痛み」に関する言葉が発せられることがしばしばあり、看護師は援助場面の中で患者の発する「痛み」に対応する必要がある。患者に対する看護師の心理的援助では、しばしば『傾聴』が重視されるが、「痛み」を訴える患者との関わりの中で、患者の「痛み」の言葉がどのように理解され、ケアに活用されているかは曖昧である。そのため、看護援助の中での患者-看護師コミュニケーションにおいて、「痛み」に関する言葉の用いられ方や受け止め方について明らかにしていくことが重要と考えられる。本研究では「痛み」に関する言葉の用いられ方やその受け止め方について、背景要因の一つとしてパーソナリティの側面とどのような関係にあるか明らかにすることを目的として実施した。 昨年に引き続き、看護に限らず広く「痛み」の表現に関する先行研究の確認を行った。加えて、小規模ながら質問紙調査を引き続き実施した。「痛み」が日常生活に影響する程度について異なる9場面を設定し、「痛み」の表現15語の使われ方の程度に関してデータの収集を行った。併せてそのような場面での「痛み」表現の使用頻度が性格とどのような関係にあるか探索的に検討するため、YG性格検査から得られる類型および特性との関係を検討した。その結果、異なる9場面で「痛み」表現の使用頻度が異なっていたことは昨年と同様であった。性格傾向に関しては、9つの場面と使用する「痛み」表現については、収集したデータが少数であったこともあり、パーソナリティの類型および特性に関して明確な関係を示すには至らなかった。
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