本研究の目的は、外来化学療法による手足症候群を早期発見し予防するための看護技術を開発し、その効果を検証することである。がん治療には、一般的に「手術療法」「放射線療法」「化学療法」の三大療法が行われている。がん治療は分子標的薬の開発など技術の進歩により、以前に比べ効果をあげながら有害事象による身体的負担を少なくし、外来での治療を可能にした。しかし、外来化学療法の点滴治療、内服抗がん剤治療(ゲフィチニブ、ソラフェニブトシル酸塩、など)は、いずれも発疹や皮膚乾燥等の有害事象が認められている。分子標的薬は、これまでの抗がん剤同様、皮膚障害のリスクがあり、特に手足症候群(hand foot syndrome)のリスクがあると言われている。手足症候群発生のメカニズムは解明されておらず不明である。手足症候群の発症プロセスと現在の看護ケアの実際について明らかにするため以下のように研究を進めた。 1.手足症候群発症予防を目的とした看護技術の基礎研究として、健康な18歳以上の男女を対象に、夜間就寝時にスキンケア(軟膏の塗布と手袋の着用)を行い、1週間継続後、皮膚水分量・色素・腫脹を測定し、その効果を検討した。皮膚の保護と保湿を目的として就寝時手指にワセリンを塗布し手袋を着用することで、皮膚水分量は上昇した。 2.分子標的薬(マルチキナーゼ阻害薬)内服開始からの手足症候群の発症プロセスを明らかにするため、入院中の内服開始予定患者を対象に、分子標的薬内服時から手指の皮膚機能(皮膚水分量、ヘモグロビン、メラニン、末梢血流、腫脹)を測定し、その変化を自覚症状と共に観察し実態調査を行った。感染状況によりデータ収集の中断を余儀なくされたが、既存の測定データを整理し分子標的薬内服後の皮膚機能の変化について特徴を整理した。
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