研究課題/領域番号 |
18K10172
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研究機関 | 椙山女学園大学 |
研究代表者 |
中嶋 文子 椙山女学園大学, 看護学部, 准教授 (20573687)
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研究分担者 |
赤澤 千春 大阪医科大学, 看護学部, 教授 (70324689)
BECKER CARL.B 京都大学, 政策のための科学ユニット, 研究員 (60243078)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 新人看護師 / ストレス対処能力 / SOC / インタビュー / 新人研修 |
研究実績の概要 |
SOC(首尾一貫感覚)はストレスを乗り越える力とされ、SOCが高い人ほどストレスを乗り越える力があり、ストレスを乗り越えた経験を積み重ねることはSOCを高めるとされている。就職後間もない新人看護師は、ストレスを乗り越えてゆくことでSOCを高める機会とすることもできる。我々の先行研究では、SOCを高める介入によって、就職時のSOCが低い場合、就職3ヶ月後には一旦上昇するが、その後は低下することが明らかとなった。また、教育担当者からは、看護実践の意味を言語化することが難しい者のSOCが低い傾向が指摘された。そこで、SOC得点の低い者に特化した支援を開発するため、新人看護師へのインタビューを実施した。 分析対象となった6名の就職時のSOC合計得点は、50点未満の者4名、51点以上60点未満の者1名、60点以上の者はいなかった。研究協力機関では、継続的な研修とともに6ヶ月間のローテーションを行っているが、就職後6ヶ月は本配属の直前の時期であり「部署配属への期待と不安」を語っていた。そして、「看護実践の困難感」を抱きながらも「成長の実感」や「対人関係の困難感」を感じつつ「患者中心の看護の希求」を「自己実現への意欲」としていることを語っていた。また、就職後12ヶ月までに到達可能な目標をイメージできない者は、就職時SOC得点が低い傾向にあった。 就職後12ヶ月のインタビューにおいて「成長の自覚」「職場チームへの帰属感」「看護の手応え」を語った者は、就職時のSOC得点が低くても、その後徐々に上昇していた。一方で、12ヶ月のインタビューにおいて「否定的な教育体制」「成長の遅れに対する焦り」を訴え、患者への看護に目を向ける余裕のなかった者は、1年間を通してSOC得点が低下していた。 新卒看護師が定期的に到達可能な目標を描き、自らの成長を自覚する支援が求められていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度には、倫理的観点から研究計画を見直す必要性が生じたため、研究倫理審査承認が遅れた結果、調査への協力リクルートが遅れ、十分なデータが収集できなかった。そこで、令和元年度まで調査期間を延長し、就職後3ヶ月研修の時点で研究者から直接研究について説明し、協力者を募った。その結果、合計7例の協力者を得た。 協力者にはSOC質問紙調査の実施と、就職6ヶ月後と就職12ヶ月後にインタビューを行い、新人看護師の臨床経験に対する受け止め方の傾向と影響要因を質的統合法(KJ法)により分析し、SOC得点との関係を分析した。その結果から、SOCの低い群への支援プログラムを検討し、令和2年度の新人看護師研修に導入することとなった。
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今後の研究の推進方策 |
(令和2年度) 平成30年度から令和元年度の採用の新人看護師を対象としたインタビューの結果から、従来の新人看護師のSOCを高める研修に「次の研修までに到達できそうな目標を立てる」を追加し、実施する。これと同時に、令和2年度採用の新人看護師を対象としたSOC質問紙調査を実施し、就職時、就職3ヶ月後、就職6ヶ月後、就職12ヶ月後のSOC得点を、平成30年度、令和元年度の結果と比較する。特に、就職時のSOC得点によって群別に分類し、得点の低い群における年間の推移に着目して比較することで、研修の評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度から令和元年度にかけてのインタビュー調査の協力者数は、当初20名程度を計画していたが、実際には予定していた数より少なくなった。また、複数の対象者へのインタビューが同じ日に実施できたケースが多く、交通に係る費用も少なくなった。以上より、インタビューに係る交通費、謝金、テープ起こし等に要する手数料等が少なく済んだため、次年度使用額が生じることとなった。
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