研究課題/領域番号 |
18K10182
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
中山 登志子 千葉大学, 大学院看護学研究科, 教授 (60415560)
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研究分担者 |
舟島 なをみ 新潟県立看護大学, 看護学部, 教授 (00229098)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 研究指導 / 修士論文 / 看護系大学院 / 修士課程 / 研究指導能力 / 自己評価尺度 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、看護系大学院に就業し大学院生の研究(修士論文)指導に携わる教員が、研究指導能力を自己評価するために活用可能な尺度を開発し、尺度の有効性を検証することである。 1.開発する尺度の基盤となる「看護系大学院の修士論文指導に携わる教員の研究指導経験」の解明 看護系大学院に在籍し、修士課程の指導教員として過去5年以内に1名以上の修了生を輩出した看護学教員10名を対象に半構造化面接法を用いてデータを収集した。収集したデータを「修士論文完成に向けた研究指導(支援)」という視点に基づき質的帰納的に分析した。その結果、看護系大学院の修士論文指導に携わる教員の研究指導経験を表す26概念が創出された。これら26概念は、飽和化を確認したデータの分析を通して得られた結果であり、高い信用性を確保している。 2.尺度開発に向けた尺度仕様書の作成とこれに基づく質問項目の作成 看護系大学院の修士論文指導に携わる教員が研究指導を自己評価するために活用可能な尺度の開発を目ざし、尺度の構成概念とその定義、構成概念の内容領域、尺度の構造、尺度の使用者等を含む尺度仕様書を作成した。また、26概念を基盤に、学生の修士論文完成を支援する研究指導行動を問う質問項目を作成し、尺度を構成した。本尺度は、看護系大学院の修士論文指導に携わる教員の研究指導経験を質的帰納的に解明した成果を基盤に質問項目を作成するため、高い現実適合性を備えるという特徴を持つ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度は、看護系大学院の修士論文指導に携わる教員の研究指導経験を表す概念を基盤に、研究指導能力自己評価尺度の質問項目を作成し、尺度の信頼性・妥当性の検討を目標としていた。 開発を目ざす尺度は、看護系大学院の修士論文指導に携わる教員の研究指導経験を質的帰納的に解明した成果を基盤に質問項目を作成するため、高い現実適合性を備えるという特徴を持つ。これは、尺度を用いた自己評価の結果が、修士論文指導に携わる教員にとって、研究指導の質向上に向けた現実的な目標として機能することにつながる。このような尺度を開発するためには、その基盤となる質的分析結果の精度の高さが極めて重要になる。令和2年度は、精度の高い質的分析結果、すなわち教員の研究指導経験の解明に向け、質的帰納的分析を研究代表者が3回、その結果に基づき研究分担者がさらに1回、計4回実施した。このように質的分析結果の産出に多くの時間を要したことが「やや遅延」の原因である。 しかし、予定よりも時間は要したが、上記のプロセスを経て、修士論文指導に携わる教員の現実の状況を反映した研究指導経験26概念を創出できた。今後、26概念を基盤に質問項目を作成し、教員が修士論文としての研究指導を自己評価するために活用可能な尺度の開発を目ざす。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、質的帰納的に解明した教員の研究指導経験を表す26概念を基盤に、修士論文指導に携わる教員が研究指導の自己評価に活用可能な尺度を開発する。 1.尺度の質問項目の作成:尺度仕様書に基づき、26概念を基盤に、原則として1概念に対して1質問項目を作成する。また、文献検討を通して尺度の妥当性の評価に必要な変数を抽出し、これらの変数と教員の特性から構成される特性調査紙を作成する。 2.尺度の内容的妥当性の検討に向けた専門家会議と予備調査の実施:第1に、複数の看護系大学院に就業し修士論文指導に携わる教員約5名を構成員とする専門家会議を開催し、作成した質問項目の適切性や回答の容易さ、追加する質問項目の有無などを検討する。第2に、専門家会議の結果に基づき修正、洗練した尺度を用いて、便宜的に抽出した教員約50名を対象に予備調査を実施する。予備調査の実施に向け、職位や専門領域、修士論文指導経験年数など、可能な限り多様な背景を持つ教員から協力を得られるよう研究者らのネットワークを駆使して協力者を募る。予備調査の結果に基づき、さらに質問項目の洗練を図る。 3.尺度の信頼性・妥当性の評価に向けた全国調査の実施:予備調査に基づき修正した尺度と特性調査紙を用いて、全国の看護系大学院に就業し修士論文指導に携わっている教員を対象に郵送法による調査を実施する。郵送法によるデータの回収状況に応じて、研究者らのネットワークを活用した個別の調査協力依頼も考慮し、目標数300のデータを収集する。 4.調査データの分析結果に基づく尺度の完成:収集したデータを統計学的に分析し、クロンバックα信頼性係数を算出し、尺度の内的整合性を検討する。また、再テスト法を実施し、尺度の安定性を検討する。さらに、尺度の妥当性の評価に向け、多種多様な側面から複数の方法を用いて妥当性の証拠を集積する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度は、質的帰納的研究の成果を基盤に研究指導能力自己評価尺度の信頼性・妥当性の検討を目標としていた。しかし、尺度開発の要となる概念の創出に向けた質的帰納的分析に難航し予想以上に多くの時間を要した。その結果、尺度の作成、尺度の内容的妥当性の検討、信頼性・妥当性の評価といった次段階への進行に遅延を来した。そのため、当初、尺度の内容的妥当性の検討に必要な専門家会議および予備調査、尺度の信頼性・妥当性評価のための全国調査に必要な経費として予算化していた費用を次年度に繰り越した。 令和3年度は、質的帰納的研究の成果である26概念を基盤に、教員が研究指導能力の自己評価に活用可能な尺度の開発を目ざす。作成した尺度の内容的妥当性を検討するため、修士論文指導に携わる教員約5名を構成員とする専門家会議の開催と教員約50名を対象とする予備調査、また、尺度の信頼性・妥当性の評価のための教員約500名を対象とする全国調査を計画している。専門家会議参加者への謝金、会議費用、予備調査および全国調査に必要な質問紙印刷費、郵送費、データ入力費等に使用する予定である。
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