研究課題
患者の治療療養生活上の安全と安楽を担保するために、適正な看護師人員配置を実現する事を目指した本研究の目的は、申請当初、1.日々発生する看護業務の大量のデータを看護行動の意図や流れを失わず、自動的に計測・蓄積・解析するしくみを作る事、2.得られたデータを元に、業務量推定のための数理モデルを構築し、当該施設の特色に合わせた最適な人員配置を検討する事であった。これに順じ、具体的な研究実施計画は1)看護業務量把握のためのデータ収集・蓄積方法の検討(H30年度)、2)1)で検討した方法論を用いた業務量調査(H31年度)、3)看護業務量推定のための分析方法・数理モデルの検討(R2年度)、4)看護業務量情報の自動加工・自動計算の検討(R3年度)としていた。しかし、H31年度よりコロナウィルス感染症蔓延のため、臨床現場での実験調整並びに調査が一切不可能となったため、3)看護業務量推定のための分析方法・数理モデルの検討(R2年度以降予定分)の研究計画を重点化し研究を進めた。これらは本調査で得られる予定であった大量情報から、パラメータの特徴や複数のパラメータ間の関連性を洗い出す研究プロセスの一部である。最終年度の研究成果として、ビーコン使用下の看護師の移動ログデータを用いた看護業務量の検討や、試行使用しているナースコールログデータを用いた大量データからコール発生の実態を検討した。その結果、看護師の移動量には受け持ち業務形態の影響が反映されていること、ナースコールの発生状況は病棟によって特徴がかなり異なること、ナースコール発生についてはコール数が極端に多い患者が存在し、それらが看護業務に大きな影響を与えている可能性がある事など、業務量推定に関係する実際を明らかにした。これらの研究成果は適正な看護師人員配置の検討と実現の一助となると考える。