研究課題/領域番号 |
18K10200
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研究機関 | 神戸市看護大学 |
研究代表者 |
澁谷 幸 神戸市看護大学, 看護学部, 准教授 (40379459)
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研究分担者 |
中岡 亜希子 大阪府立大学, 看護学研究科, 准教授 (60353041)
大澤 歩 神戸市看護大学, 看護学部, 助教 (70780948)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 組織レジリエンス / 概念分析 / 看護組織 |
研究実績の概要 |
2019年度は、研究計画第1段階の「組織レジリエンスの定義および参加観察枠組みの明確化①」と第2段階の「組織レジリエンスの実際の解明に向けたデータ収集と分析②」を目標としていた。 ①については、2018年度に行った文献レビューから、本概念が複数の学問分野で研究されていることが明確になったことから、これらの研究についての概念分析を行うことで、本概念の再定義を行った。海外文献30件について概念分析を行った結果、「組織レジリエンス」の先行要件は【社会における侵襲的事象】【組織内に生じる混乱】、帰結は【組織のパフォーマンス向上】【組織の成長】の2つが抽出された。また、属性は【対応力】【組織特性】の2つが抽出され、【対応力】にはアセスメント力、即応力、回復力、適応力、維持力、協働力が、【組織特性】には、民主的な管理、高いマネジメント力、余力、危機や変化への準備性、優れた人材、心理的安全性、信頼性、柔軟で創造的な文化が含まれた。以上の結果から、組織レジリエンスは、「社会における侵襲的事象や組織内の混乱が生じた際に、それに応じることのできる組織特性と対応力を発揮する組織の力」と定義し、レジリエンスの高い組織は、侵襲的事象に見舞われても、レジリエンスを発揮して、従前よりもパフォーマンスを向上させ組織の成長の成し遂げることができることが示唆された。本研究結果は、論文化し投稿中である。 ②については、本研究課題申請時には、臨床でのフィールドワークによるデータ収集としていたが、概念分析によって明確化した「先行要件」から、観察期間や頻度、場面の特定が難しいと考え、データ収集方法を当初計画していた第3段階研究の「看護師長によるフォーカスグループディスカッション」と統合して実施することに変更した。2019年度中に倫理委員会の承認を受け、約200床の中規模病院1施設においてデータ収集中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度内の研究計画では、1施設におけるフォーカスグループインタビューを3回実施する予定で、2019年内に2回目までを実施し分析中であった。しかし、2020年2月下旬頃より、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、研究フィールドである病院に出向くことが困難になったこと、対面での会議ができないこと、研究参加者である看護師長が感染対策の最前線で活動していたことなどにより、予定のフォーカスグループインタビューができず、データ収集が中断しており、研究活動の進捗に若干の遅延が生じている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、現在行っている1施設におけるフォーカスグループインタビューを残り3~5回行う予定である。さらに、研究施設をもう1施設追加し依頼していく予定であり、合計2施設でのデータ収集と分析を行う予定である。 本研究は、「危機的状況」が生じた際の組織の対応と回復力をテーマとしているが、2020年初頭に発生したパンデミックは、まさに「危機的・侵襲的状況」に相当する。この状況下における看護組織の対応を丁寧に情報収集することは、看護組織のレジリエンスの実態を知るために欠かせないデータであると思われ、今後の看護実践現場への貢献が大きいものと考える。 現在、昨年から協力してもらっている施設とは、連絡を取り、現場の状況について共有できており、間もなく感染予防に留意しながら、データ収集を再会できる予定である。 これらを踏まえ、2020年度は、看護実践現場で勤務する看護師長へのフォーカスグループを重ね、看護組織のレジリエンスの実態を描くことを目標として活動する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度に研究協力が得られた施設が、近隣にあったことで、予定していた旅費をほとんど使用しなかったこと、データ収集がCOVIT-19の影響で中断したことで予定以上に残額が生じた。 今年度は、昨年度できなかったデータ収集を進めるとともに、施設を追加してデータ収集を行うため、旅費およびデータ分析のための逐語記録作成などに2019年度の残額を使用する予定である。また、COVIT-19関連の組織的対応が数多く報告される可能性がある看護系関連学会に参加し、本研究課題のデータ分析に活用する予定である。
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