研究課題/領域番号 |
18K10207
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研究機関 | 青森中央学院大学 |
研究代表者 |
三國 裕子 青森中央学院大学, 看護学部, 准教授 (80707323)
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研究分担者 |
千葉 正司 弘前学院大学, 看護学部, 客員教授 (40003652)
岡本 珠織 (藤澤珠織) 青森中央学院大学, 看護学部, 講師 (70595694)
成田 大一 弘前大学, 医学研究科, 助教 (90455733)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 静脈穿刺 / 手背 / 皮静脈 / 皮神経 / 動脈 |
研究実績の概要 |
看護技術である静脈内注射に関し、安全な静脈穿刺部位選定のための看護学及び解剖学的研究を一貫して進めてきた。静脈穿刺部位として、肘窩および足背を調査してきたが、前腕から手背にかけても臨床で選択される頻度が高い。本研究の目的は、これまでの静脈穿刺部位に関する研究を活用し、前腕から手背における安全な静脈穿刺部位を献体調査により分析するとともに、その信頼性・妥当性を生体調査から検証し、前腕から手背における安全な静脈穿刺部位を解明することである。 平成30年度は、医学科解剖実習体15体を用いて、前腕から手背における皮静脈の走行と太さ、皮静脈と皮神経、動脈、変異のある動脈、静脈弁との位置的関係を描写・写真撮影より調査し、データを得た。調査データを手背静脈網の走行を中心として分析した結果、浅深の皮静脈の有無、静脈弓の高さ、上行静脈と斜静脈の出現によりその走行が変化することが明らかになった。さらに、先行研究や文献検索を重ねたところ、手背静脈弓の定義は分析の視点により異なることが確認されたため、手背静脈弓の定義を改めて検討する必要性も示唆された。また、8例の手背を用いて静脈弁の出現部位と種類について調査・分析した。静脈弁は、成書での報告と同様に、中枢部より末梢に多く存在していることが確認できた。手背の皮神経および動脈については、皮静脈と伴行もしくは交差する頻度が確認できたことから、今後は調査件数を増やして分析していく予定である。 このように、初年度は皮静脈、皮神経、動脈の走行と静脈弁出現部位の特徴を確認することができ、新たな課題も見出すことができた。この結果は、同年度に日本解剖学会総会において報告した。次年度以降は、解剖実習体と生体の両者のデータを統合してその信頼性をさらに検証し、安全な手背周囲の静脈穿刺部位を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度の予定は、解剖実習体15体を用いて前腕から手背における皮静脈の走行、皮静脈と皮神経、動脈、変異のある動脈、静脈弁との位置的関係を調査し、データを得ることであった。実際の調査件数は予定通り15体で、必要なデータはすべて取ることができた。さらに、先行研究を基に、皮静脈の走行、静脈弁、皮静脈と皮神経・動脈との位置的関係についても分析することができた。その結果、手背静脈網の走行を大別すると9パターン(9型)になるという新たな考察を得ることができた。また、手背静脈網の分析により、手背静脈弓とは本来は何を指すのかという本質的な問いが生まれた。これは、次年度の研究の重要なテーマとなると考える。 平成30年度は調査の途中ではあるが、この手背静脈網の走行パターン、静脈弁の出現部位、皮神経の走行の特徴を第1報として学会で報告するに至ったことから、研究は順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、平成30年度と同様に新たな解剖実習体15体を用いて調査を進め、調査結果の信頼性の確認を行う。特に動脈走行を中心とした変異の出現に注目して調査を進める計画である。また、調査結果をもとに文献検討を重ね、手背静脈弓の定義についての課題に取り組む。調査結果は、手背静脈網を中心として分析し、看護学系および解剖学系学会において報告する予定である。同様に、論文作成も開始し、投稿を行う。 さらに今後、献体調査及びそのデータ分析で探求された安全な静脈穿刺部位の妥当性を、超音波診断装置を用いて生体により検証するため、その準備を開始する。生体の調査方法は、超音波診断装置を用いて探触子(プローブ)を安全な静脈穿刺部位とされる場所に当て、映像を撮影し、前腕から手背における皮静脈と神経、動脈との位置的関係を測定する。このため、調査に最適な超音波診断装置の検討と選択、購入を行い、パイロットスタディを計画する。なお、生体調査であることから、所属大学による倫理審査が必要であるため、申請を行う予定とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度は、市外における大学で解剖実習体の調査を行うための予算を確保していたが、順調に調査が進み、追加調査日が生じなかったことから、旅費に関する次年度使用額が生じた。また、消耗品として文献購入の予算を確保していたが、文献複写や近隣の大学で借用が可能な文献があったことから、消耗品の次年度使用額が生じた。 これららを合算すると約30,000円となるため、今後、生体検査のために必要な超音波診断装置およびその付属品・消耗品の購入としての設備備品費の増額を予定する。
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