研究課題
これまでラウリル酸ナトリウム溶液を用いて、前腕手掌側を刺激した際、皮膚バリア機能の指標である経表皮水分蒸散量(TEWL)が上昇し、皮膚電流知覚閾値(CT)と疼痛閾値(PT)が有意に低下することを示した。このことは皮膚バリア機能が低下すると疼痛を含めた皮膚の知覚が敏感になることを示している。また、ドライスキン時には皮膚バリア機能が低下することが知られている。そこで角層水分量とTEWLとの関係を検討した。その結果、角層水分量とTEWLとの間には負の有意な相関関係がみられた。つまり、これは角層水分量が多いほどTEWL低値を示し、皮膚バリア機能が維持されていることを明らかにした。最終年度は、皮膚温とCTあるいはPTとの関係を調べた。前腕手掌側の表面皮膚温を持続的に測定し、保冷・保暖機能マットを用いて刺激部位を冷却あるいは加熱した際のCTとPTを測定した。その結果、皮膚温は29.3~36.7℃(n=31)変化し、CTは6.4~19.6μA、PTは43.2~64.4μAの変化であった。皮膚温とCTとPTとの相関関係(Wilcoxonの順位和検定)をみると、CTとはr=-0.5390 (p=0.002)、PTとはr=-0.7665 (p<0.001)と、いずれも有意な相関関係がみられた。このことは皮膚温が低いときはCTとPTはいずれも高く、皮膚温が上昇するにつれてCTとPTは低下することが明らかになった。つまり、皮膚温が高くなると知覚や痛みに対して敏感になることを示唆している。知覚や痛みの種類によっても異なると考えられるが、温罨法によって皮膚が暖められると痛みを含む知覚が敏感になることを念頭においてケアすることが必要であると考えられた。
すべて 2021
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別冊Bio Clinica
巻: 10 ページ: 140-143
Digestive Diseases and Sciences
巻: 21 ページ: -
10.1007/s10620-021-07017-y
10.1007/s10620-021-07260-3