我が国の看護の量的研究においては、推測統計的な手段として統計的検定がよく使用されている。検定では「第1種の誤りを犯す確率(α)」と「第2種の誤りを犯す確率(β)」は重要であるが、「第2種の誤りを犯さない確率(1ーβ)」である検定力について言及されることは少ない。なお検定力には「標本の大きさ」「母集団における効果量」「有意水準(α)」の3要素が数理的に関係している。本研究は、我が国の看護量的研究における検定力の実態について初めて講究することを目的とした。 分析対象は、2018-2019年度の日本看護研究学会雑誌掲載の論文のうち、統計的検定を含む18論文とした。母集団における効果量の区分はCohenに準拠し、検定の種類ごとに小・中・大の3段階に設定した。また、有意水準は5%とし、全て両側検定とした。1論文では通常は複数の検定が使われているため、1論文に含まれるすべての検定に対する検定力を小・中・大別に平均し、求めた平均値をその論文における検定力とした。統計ソフトウェアとしてPASS2020を用いた。 分析の結果、用いられている検定の種類は10種類であった。t検定(対応のない場合)や重回帰分析が上位を占めた。そして検定力の平均は、効果量が小の場合は0.27、中では0.76、大では0.92であった。 これらの結果は我が国の看護研究についてで初めて明らかにしたものである。今後は雑誌の種類を海外も含めて検討を継続したい。
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