研究課題/領域番号 |
18K10244
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研究機関 | 大分県立看護科学大学 |
研究代表者 |
佐伯 圭一郎 大分県立看護科学大学, 看護学部, 教授 (50215521)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 看護研究 / 量的研究 / 統計学 / ガイドライン / 論文執筆 |
研究実績の概要 |
昨年度より継続して,国内看護系学術雑誌の執筆ルール及び量的研究の頻度や利用手法,記述の現状の分析を行った。日本看護系学会協議会会員47学会のウェブサイト及び学術雑誌を対象に,投稿規定・執筆要項等(2018年末時点)を収集,論文は2017年発行の原著論文という条件で医中誌Web版を検索し,リストを作成した。 執筆ルールは投稿規定の一項目としてする場合がほとんどで,執筆要項等が独立するのは8誌であった。記載内容も少なく,例えば編集スタイル全体をAPA準拠と明記するのは2誌,他に8誌が文献や図表はAPA方式と記載している。また,執筆にあたりCONSORT声明等を参考にすることを推奨するという記載は1誌だけであり,抄録(要旨)についても,文字数指定のみが多く,構造化抄録を指示または実際の抄録がすべて構造化であったのは5誌であった。 原著論文相当と判断した340編を精査したところ,量的研究手法を用いた研究は160編(47.1%)であった。年間10編以上原著論文が掲載されていた14誌の量的研究の割合は0%から94%とばらついた。統計関連執筆ルールの例として量的研究が5編以上掲載された12誌でのルールの統一状況を示すと,APAの「理論上最大値が1のP値などは整数部の0を省略」というルールを遵守するのは3誌,逆に省略しないのは4誌,混在は5誌であった。一部でAPA準拠を指示する場合はあるが,執筆ルールは文献などの一部しか定めない状況であり,ほとんど研究者個人に委ねられているという現状である。 狭義の統計学的な部分以外に研究の報告に関するルールとして望ましい事項の整理を開始した。特に,看護学の研究領域毎のばらつきを踏まえ,事項毎の重要度やゆらぎの許容範囲なども考慮しながら「報告のためのガイドライン試案」の作成を開始した段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年末から大学入試関連の様々な変更に対応するため,所属における対応の責任者として研究のエフォートが低下していた。 また,年度途中に看護系学会での編集委員の任期が終了し,他の統計関係学会の編集委員に就任したため,それぞれの学術集会のタイミングではなく2020年2~3月において看護系研究者や統計学(特に編集にかかわる方々)の専門家との面談やチェック依頼を予定することにしていた。しかし,今回の新型コロナの関連で,この予定がすべてキャンセルとなっており,「ガイドライン試案」の完成は大幅に遅延している状況である。
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今後の研究の推進方策 |
「ガイドライン試案」の完成に向けて,看護系研究者や統計学専門家との面談やチェック依頼をメールやオンライン会議の形で進行出来るよう調整を行いたい。研究全体の遅れを回復することは困難で,2020年度の看護系学会学術集会で「ガイドライン試案」を公開し,広く意見を求めることは出来ない見込であるが,可能な限り研究を進め,個人の研究用サーバでの公開と意見の募集を行いたい。場合によっては研究期間の延長を申請し,最終的な成果の学会発表や論文化は2021年度にずれ込むこともやむを得ないと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究全体の遅れにより,ガイドライン試案等整理作業の人件費が執行されていない。またコロナ禍の影響で入手困難となったweb会議関連の機器類購入が,次年度に先送りとなった。 遅延はあるものの,予定通りの内容で執行する計画である。
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