研究課題/領域番号 |
18K10245
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研究機関 | 大分県立看護科学大学 |
研究代表者 |
小野 美喜 大分県立看護科学大学, 看護学部, 教授 (20316194)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 看護倫理教育 / 特定行為 / 高度看護実践 |
研究実績の概要 |
2015年から開始された「特定行為に係る看護師の研修制度」(以下、研修)によって、育成された看護師(以下、特定看護師)は医師不在時も手順書により自らの判断で治療や処置に係り、従来の看護実践より裁量範囲が拡大されている。そのためこれまで以上に倫理的姿勢や倫理的問題解決能力が求められる(望月他2017)。しかし厚生労働省の示す研修カリキュラムに看護倫理の科目はなく、特定看護師が倫理的問題に対応する能力をどのように育成されるかが研究疑問である。本研究目的は、1)特定看護師が体験する倫理的問題は何か、2)異なる研修形態で育成された特定看護師の倫理的対応能力に違いはあるか、である。 目的1)について、大学院で特定行為研修を受けた看護師の経験した倫理的問題について質問紙調査を実施した結果を再分析し、倫理的問題の検討を行った。その結果、特定行為実施の役割を担うにあたり、医師や看護師との関係性に障壁を感じるなどの倫理的問題を抱えており、所属配置や組織の中での役割の理解不足が原因にあることが示唆された。また患者ケアにおいては、患者の権利を重視した治療のあり方に倫理的問題を感じていた。看護のアイデンティティを持ちつつ新たな役割に生じた倫理的問題を体験していることはわかった。これらは日本看護倫理学会誌にて公表した。目的2)については、看護倫理教育の実践・研究をしてる専門家より助言を受け、看護実践者への倫理教育の内容や方法について検討をした。教育内容として「看護者の倫理綱領」「患者意思決定」「患者の尊厳」など複数の必要項目を抽出し、教授方法についても先行研究より知見を得た。それらをもとに特定行為研修機関への倫理教育に関する質問紙を作成した。目的1)の結果と倫理教育に関する調査結果を照らして分析することで、異なる研修形態で育成された特定看護師の倫理的問題の違いを検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度の実施計画は、特定行為研修修了生からのインタビュー調査とインタビュー結果をもとに特定行為研修機関への全国的調査(質問紙調査)の準備を行うことであった。しかし、コロナ禍となり看護職である研修修了生ヘのインタビュー調査の実施を見送った。そのため研究遂行の対応策として、特定行為研修を受けた看護師のサンプルとしては限定的ではあるが、2015~2017年度基盤研究C「特定行為に係る看護師が経験する倫理的問題と問題解決の方略に関する研究」で得られたデータ(大学院にて特定行為研修を学んだ看護師サンプル)を基に質問票を作成した。無記名自記式質問紙によって教育背景の異なる①認定看護師教育での研修、②医療機関等での研修、③大学院教育機関での研修、この3タイプの研修を受けた看護師約2000名を対象とした質問紙調査を計画準備した。研究計画は所属機関の研究倫理安全委員会の承認を得て実施するに至った。2021年1月に調査票を発送し、2021年4月末までを回収期間としている。 また、同時に特定行為研修機関(2020年現在191機関)に対して看護倫理教育の実態を把握するための調査を実施した。特定行為研修も同様に①医療機関、②大学、③大学院等多様な研修機関が対象であり、機関にて実施した看護倫理に関する内容と方法について問い、質問紙票の回収を終えている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は当該研究課題の最終年度である。2020年度に実施した質問紙調査の結果を分析する。調査は①認定看護師教育での研修、②医療機関等での研修、③大学院教育機関での研修、この3タイプの研修を受けた看護師であり、それぞれの教育背景毎の特徴を確認し、比較考察していく。また、研修機関に実施した質問紙調査の結果(看護倫理教育の内容・方法)について分析する。特定行為研修修了者の結果と特定行為研修機関の教育実態の結果をもとに特定行為研修における看護倫理教育のあり方を検討する。これらは随時論文公表をしていく。 さらに次段階として、本研究成果を反映した看護倫理教育の実践や必要教材の準備が必要と考える。学会等での意見交換会を設けて研修機関との情報交換をはかりながら、次研究計画を立案する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により学会がすべてオンライン実施となり、旅費使用が生じなかった。次年度の学会開催は現状況は定かではないが、旅費使用が継続して使用見込みがない場合は、予算を海外論文への投稿費や、当該研究結果を反映した看護倫理教育の準備としての教材作成等の費用に活用して研究活動を遂行する。
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