慢性疾患患者は家庭,職場,社会における生活に治療を組み込んだ生活の管理が求められるが,必要な支援を継続的に受けられず疾患が悪化したり,失業や離婚等生活が破綻してしまう者も少なくない.患者の自己管理を支援するプログラムは地理的・時間的制約から十分に普及しておらず,プログラムを受講したとしてもその後効果が持続しない等の課題がある.こうした課題の解決のため,本研究ではインターネットを利用して他の患者とのコミュニケーションを図り,定期的な目標を設定し評価する機会を提供するアプリケーション(以下アプリ)を開発し,その効果を評価することを目的とした. 2018年度にアプリを開発するため,既存の健康管理アプリの情報収集,慢性疾患患者を対象としたニーズ調査を行った.ニーズ調査では,国内在住の慢性患者を対象としたフォーカスグループインタビューを2回行い,アプリの機能等への要望を聴取した. 2019年度は2018年度に実施したニーズ調査のデータを分析し,アプリに必要な機能の詳細を検討した.また,開発にあたって必要なライセンス契約の締結や開発業者の検討し,必要な機能をまとめた. 2020年度はこれまでのニーズ調査結果や文献検討の結果をもとにアプリケーションの開発を行いα版を開発.アプリケーションにはアクションプランの作成,記録の管理,他のメンバーとのコミュニケーション機能などを実装された.また,アプリに必要な機能の詳細の検討結果に関する報告をInternational Conference on Communication in Healthcare(ICCH 2020)において発表した. 2021年度は完成したα版の動作確認および実運用を想定したテストを行い,修正が必要な点を改修し,運用が可能な状態となった.
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