研究課題/領域番号 |
18K10255
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
原 三紀子 東邦大学, 看護学部, 教授 (90291864)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 聴く / self-awareness / 神経難病 / 看護師 / 教育プログラム / 看護継続教育 / 心のケア |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、看護師の“聴く基盤”を強化するための看護教育プログラムを構築することである。今年度の主な目的は先行研究(2011年~2014年度基盤研究(B) 課題研究番号23390505)で開発した「聴く」ことに焦点をあてた神経難病患者のための看護継続教育プログラムの強化であった。先行研究では、看護師が聴く基盤を築くには他者からのフィードバックによる気づき(self-awareness)が重要であることが明らかになった。 そこで、我々は「self-awareness(以下S-A)」の国内外の看護文献を概観した。S-AはPhilip Burnard とRawlinsonin JWが1980年の中頃にself-awarenessの影響について初めて言及している。以後S-Aの概念分析による定義、S-Aを促進するための教育的方法の開発や評価方法などが研究されていた。S-Aの概念分析では、S-Aの先行要件として、自分の考えと態度の不一致性や、自分と他者の見方の間のずれを認識することから始まる。 刺激(内省、内観、フィードバック)はS-Aにとりくむ機動力になり、自分や家族の価値を承認することもS-Aを高める先行要件となる。S-Aにより、自分と他者との治療的関係が促進され、自制心が向上し、コミュニケーションスキルが磨かれる。またストレスからの立ち直りが早くなり、他者と共感できるようになる。自尊感情、自己効力感が向上し、首尾一貫した自分(自己の存在を真に正直に表現する状態)の価値観、願望、感情に従い、うわべを取り繕わずに行動できるようになる事も明らかになった。また、メタ認知に関する近年度の欧米の研究の動向等について専門家である有賀誠一氏を迎えて研究会を開催した。さらに、日本難病看護学会交流集会では「self-awareness」の観点から聴くことを考えるセッションを行い教育方法を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、先行研究から得られた教育プログラムの要素を元に、概念分析を行い教育プログラムのコアとなる概念‘self-awareness’を明確にすることができた。self-awarenessの理解を深めるため、研究会を行い、心理学領域におけるメタ認知の考え方、メタ認知能力の育成についての考え方、欧米における研究の動向等の知見を得た。 さらに、日本難病看護学会交流集会で、self-awarenessの視点を取り入れたワークを行ったことで、参加者より「自己認識が、聴く作業には重要であると思った」などのフィードバックがあり、「聴く」ことについて自分の枠組みを意識することにつながっていたことを確認した。これらの結果から“聴く基盤”を強化するための看護教育プログラムの骨子を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、今回得られた教育プログラムの骨子をもとに、日本難病看護学会などの学会において交流集会を継続し、その教育効果を測るデータ収集を行いながらデータの分析を行う。また、より多くの難病看護にあたる看護師を対象とした教育セミナーを開催し、データを集積するとともに参加者との意見交換を行い、教育プログラムを多角的に評価していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は英文校閲を行うことができなかったため次年度に繰り越し予算を使用する予定である。
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