本研究は,看護職の抗微生物薬投与の現状,看護基礎教育・卒後教育における抗微生物薬投与に関する教育の現状を明らかにした。 研究課題1では,全国特定機能病院・がん拠点病院・300床以上の地域医療支援の看護師,感染管理認定看護または感染症看護専門看護師(以下,ICN)を対象に質問紙調査を実施した。教育内容17項目中,看護師の受講が70%以上であった項目は4 項目であった。PK-PD 理論の受講は 9.6%,ブリストルスケールを活用した便性状のアセスメントの受講は 36.6%,時間依存性・濃度依存性抗菌薬の種類の受講は42.9%・37.3%であった。ICNの認識として,教育の必要性の認識が高かったのは,『溶解・混合する タイミング』,『投与直前に溶解・混合する理由』など抗菌薬の準備,配合変化,血中濃度測定に関する項目であった。施設内教育が実施されている割合が高かったのは,血中濃度測定,時間依存性抗菌薬の投与回数に関する項目であった。 研究課題2では,全国看護系大学の教員を対象に,課題1と同様の教育内容について質問紙調査を実施した。抗菌薬療法に関する基礎知識7項目では,薬理学教員は看護系教員より看護基礎教育における教育の必要性を感じており,7項目中6項目について,80%以上の薬理学担当教員は教育を実施していた。抗菌薬の静脈注射に関する看護実践10項目では,看護系教員の方が薬理学担当教員よりも教育の必要性を感じていたが,実施していないと回答した人は68~92%であった。課題として,科目の時間数の不足,他の科目との連動性と知識の統合に関することなどがあげられた。 調査結果より,看護基礎教育では,抗微生物薬投与に関する教育内容が不足しており,卒後教育においては,教育が定着していると言えない状況が明らかとなった。卒後教育の充実,使用頻度が高い抗菌薬に関する OJT の充実がのぞまれる。
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