研究課題/領域番号 |
18K10269
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研究機関 | 公立小松大学 |
研究代表者 |
森川 浩子 公立小松大学, 保健医療学部, 教授 (10313743)
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研究分担者 |
任 和子 京都大学, 医学研究科, 教授 (40243084)
北田 宗弘 金沢医科大学, 医学部, 准教授 (40434469)
古家 大祐 金沢医科大学, 医学部, 教授 (70242980)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 高齢者 / 糖尿病 / アクセプタビリティ / 自己管理 / 生活習慣改善 / 橋渡し研究 / 家族 / 自立支援 |
研究実績の概要 |
《研究成果:高齢糖尿病患者においてアクセプタビリティに関する検討》わが国では、1000万人の糖尿病患者において、3分の2が65歳以上の高齢者である。2018年『高齢者糖尿病治療ガイド』が出版され、高齢糖尿病患者を対象に、治療および生活習慣改善の標準化が図られた。高齢糖尿病患者は、身体的問題のみならず、心理社会的問題も多く抱えており、筋力低下や脳機能低下により日常生活動作の問題が起こりやすい。そこで、「医療利用者目線での受け入れやすさに着目した介入」として、英国や米国で糖尿病患者を対象にしたアクセプタビリティリサーチについて介入方法を調査した。 《高齢糖尿病患者に対する調査項目の明確化》高齢糖尿病患者は、糖尿病性合併症とともに、老年症候群を併せ持ち、75歳以上の後期高齢者では機能的低下が高頻度におこることから、要介護になりやすい。高齢糖尿病患者における総合機能評価は、さまざまな評価スケールから構成され、四肢筋力量や歩行速度の測定、転倒リスクスコアなど多岐に渡る。そのため、海外の研究動向をふまえ高齢糖尿病患者の日常生活行動に関する調査項目を検討し、網羅すべき調査項目を限定した。 《介入方法の検討》高齢糖尿病患者は、年齢・罹病期間・臓器障害・低血糖の可能性・サポート体制が異なり、個別性にあった対応が求められる。一方では、共通して抱える問題(Common Problem)として、シニアの体力低下(フレイル予備軍)が大きな社会的関心となった。高齢糖尿病患者のアクセプタビリティ(できる範囲のことをマイペースで取り組む)をふまえて、持続可能性に対応した社会的支援を展開することが求められる。さらに高齢糖尿病患者は、セルフモニタリング(心拍数・血圧・血糖値・酸素飽和度)を積極的に利用し、安全性の高い介入方法として取り入れる方向で検討した。また、家族の協力が求められるように資料作成を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)高齢糖尿病患者のアクセプタビリティリサーチは、2000年以降、急に増加傾向にあり、さまざまな介入報告がある。わが国は、世界第一位の高齢化率であり、しかも人種差により、糖尿病腎症の発症頻度が高く、新規透析導入患者も増加している。2010年『糖尿病治療ガイド』(日本糖尿病学会編)などと整合性を保ちながら、具体的な介入方法(調査項目・生活習慣改善の方法)を検討している。研究代表者の所属機関で倫理審査依頼を提出したが、部分的な修正が求められ、もっか修正段階である。 2)研究成果を、2020年3月日本糖尿病学会主催『糖尿病学の進歩』シンポジウムにおいて発表予定であったが、新型コロナ感染症のため開催延期になり、報告のタイミングを逸した。2020年9月2-3日に延期となったため、発表に向けて準備中であり、また糖尿病専門誌に総説として報告するために執筆中である。
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今後の研究の推進方策 |
《令和2年度》1)《アクセプタビリティリサーチの展開》2020年10月30-31日、第35回日本糖尿病合併症学会(会長:研究分担者である古家大祐教授)の市民公開講座(2時間)において、高齢糖尿病患者および家族を主なる対象として、アクセプタビリティリサーチを実施する。具体的には「動機づけ面接法」の技法を用いて、①問題状況の明確化、②当事者間の討議、③問題解決、④解決方法(体験的生活習慣改善)を行う。市民公開講座は、約300人を対象に募集し、ピアサポートによる患者参加型の話し合いを通じ、自己洞察が期待され、また実践的な運動(日常生活行動の歩行機能に焦点をあてる)をインストラクターの指導で実施する。市民公開講座では資料作成(2020年『糖尿病治療ガイド』に準拠)し、高齢糖尿病患者に対する生活習慣改善の必要性と具体的な方法について、わかりやすく示す。対象者の募集および実施項目:本研究参加についての同意については、研究代表者が所属する機関の倫理審査を経て実施する。 2)《市民公開講座のねらい》市民公開講座では、高齢糖尿病患者に対する医学的マネージメントとともに、心理社会的啓発として、音楽と対談(研究分担者:古家教授と著名人)を取り入れ、高齢糖尿病患者が生き抜いてきた困難な時代を振り返り、老化(Aging)を前向きにとらえ「自立した生活とは?」について考える機会とする。 3)《高齢糖尿病者の充実した生き方に関する社会への発信》市民公開講座は、高齢糖尿病患者が抱える問題について、社会への発信として、報道機関(新聞やテレビ等)の協力を得て実施する。さらに壮年期糖尿病患者に対しても、重症化予防について問題提起を行い、糖尿病合併症に対する意識を高める資料を提示し、ムーブメントを起こす。 《令和3年度》研究成果報告:日本糖尿病学会や国際糖尿病連合など、国際的な学会による研究成果報告を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
【次年度使用額が生じた理由】当該助成金が生じた理由として、高齢糖尿病患者を対象にした健康習慣改善のプログラムのアンケート項目の検討及び介入内容に関する準備段階に時間がかかったことがある。 【次年度の使用計画】令和2年10月30-31日に開催される『第35回日本糖尿病合併症学会年次集会』(会長:本研究班の研究分担者が会長を務める)において、高齢糖尿病患者を対象にした生活習慣改善のアクセプタビりティリサーチを行う。その際に、フレイルチェックやフレイル予防運動を紹介し、高齢者は健康状態の過信は禁物、高齢糖尿病患者に適合した身体機能を良好に保つ方法について、パンフレットを作成する。したがって、25090円の差額は、パンフレット作成経費に用い、パンフレットは、報道機関にも活用していただくように、進める。
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