研究課題/領域番号 |
18K10269
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研究機関 | 公立小松大学 |
研究代表者 |
森川 浩子 公立小松大学, 保健医療学部, 教授 (10313743)
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研究分担者 |
任 和子 京都大学, 医学研究科, 教授 (40243084)
北田 宗弘 金沢医科大学, 医学部, 准教授 (40434469)
古家 大祐 金沢医科大学, 医学部, 教授 (70242980)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 高齢者 / 糖尿病 / 糖尿病ディストレス / 慢性腎臓病 / 生活習慣改善 / アクセプタビリティ / 橋渡し研究 / 認知機能 |
研究実績の概要 |
本申請研究では、超高齢化社会において①糖尿病重症化予防、②QOLの改善と健康寿命の延伸、③自己管理能力を維持し、医療費抑制を目的としている。 高齢糖尿病患者は、医療依存度の高い生活を行っているが、加齢に伴う認知機能の低下や身体機能低下によって、厳格な自己管理を行うことが困難である。米国糖尿病学会では、糖尿病負担度測定スケール(Diabetes Distress Scale)を臨床研究に用いており、アクセプタビリティリサーチにつなげている。 高齢糖尿病患者は、感染や骨折、筋力低下から要介護にいたるリスクがあり、「高齢者糖尿病治療ガイド2021」が出版された。このようなガイドラインを高齢糖尿病患者の介入につなげることが課題である。2016年に、糖尿病による合併症実態調査(腎症・網膜症・神経障害)がなされ、有所見者は55%であった。しかし、高齢糖尿病患者に特化した調査研究はない。アクセプタビリティリサーチでは、対象者(Target Population)の期待に合致することに重点があり、対象者の身体機能や認知機能、実施可能性を同定することが求められている。 また、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、高齢糖尿病患者は、感染防御の必要から運動機能の低下や、慢性腎臓病などの合併症進展が起こっていないか、予後悪化に関する実態調査を緊急に行うとともに、糖尿病負担度が高くなっていないか、調査する必要がある。高齢糖尿病患者において慢性腎臓病が悪化した場合は透析導入件数が上がり、医療費高騰につながりかねない。高齢糖尿病患者のアクセプタビリティをどのような項目で把握するか、調査用紙を作成し、研究代表者の属する施設の倫理審査にむけての準備が整ったところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Diabetes Distress Scale(糖尿病負担度測定スケール)は、米国糖尿病学会が実施する臨床研究にも取り入れられ、患者の身体的・心理的負担度に関して、感度が高いことや、多くの調査を通じ平均値が出ているため、対象者の負担度について判定可能である。しかし、本申請研究では、対象者の年齢層は高く、高齢糖尿病患者の特性を抽出できるか、検討の余地がある。 また、新型コロナウイルス感染症の流行につき、高齢糖尿病患者で、慢性腎臓病を合併する患者は、感染症のリスクが高いため、外出は控える傾向にあると思われ、QOLや身体機能の変化、糖尿病負担度測定スケールを用いることは、非常に大きな示唆を得ると思われる。 高齢者糖尿病患者のアクセプタビリティの概念の検討については、日本糖尿病学会主催 【第54回糖尿病学の進歩】(研究分担者:古家大祐教授が世話人)においてシンポジウムで、『糖尿病教育の新価値創造 4 Core Goals bu Both th 4P and 4A』というタイトルで、研究代表者:森川が、発表した。糖尿病教育には、糖尿病ガイドラインによる根拠に基づく医療とともに、患者の期待に重点を置いたアクセプタビリティの効果について発表することで、大きな問題提起が行えた。 もっとも、新型コロナウイルス感染症の流行により、当初の計画どうりの教育介入が進まなかったことが残念である。しかし、高齢糖尿病患者がコロナ禍で感染防止や栄養・運動面で大きな負担(Distress)をもっておられることも事実である。 本申請研究では、高齢糖尿病患者で慢性腎臓病患者をコホートとして、長年にわたり教育介入を行っており、この患者集団の負担度や期待に焦点を当てて、研究を展開していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1)高齢糖尿病患者で慢性腎臓病を併存する患者に焦点をあて、質問紙法によって、糖尿 病負担度測定スケールと、病状の変化、身体機能やQOLの変化について、質問紙による調査を行う。 2)研究代表者の所属する施設の倫理審査委員会に、調査方法及び質問紙に関する倫理審査を受ける。 3)日本糖尿病学会主催による第65回日本糖尿病学会年次集会(2022年5月)にむけて、研究報告を行う。 4)Diabetology International に 高齢糖尿病患者のアクセプタビリティリサーチの検討について、論文投稿を行う。 5)糖尿病及び境界型糖尿病を合わせると2000万人におよび、そのうち、60歳以上は、全体の約80%である。非常に多くの対象が、加齢現象と糖尿病合併症の重症化、QOLの低下という状況に置かれている。また、要介護状態になっても、家族支援は得られにくい。社会全体にむかって、糖尿病の生活習慣改善をどのように行えばいいか、今回の研究を通じて得られた所見を、マスコミ等を通じ反映させていきたいと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の流行により、高齢糖尿病患者を対象にした生活習慣改善の企画ができなかったため、会場借り上げ費や、印刷費の支出ができなかった。2021年度は、高齢糖尿病患者が新型コロナウイルス感染症による感染防御によって、糖尿病負担スケールやQOLに関する調査を実施するための質問用紙作成の印刷費や郵送費、学会参加費などに用いる予定である。
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