研究実績の概要 |
頭頸部への放射線治療に伴う放射線性粘膜炎は照射に一致して発症する。重度の粘膜炎が生じると、摂食不良や感染症などの続発的な合併症を誘発し放射線治療完遂の妨げになる。重要なことは、放射線粘膜炎自体の発症を予防することではなく重度の粘膜炎の発症を予防することである。そのため、様々な臨床研究が行われているが、重症化予防法について確立した方法はない。我々は、独自のプロトコールである予防バンドルを作成し、予防バンドルの効果検証のために多施設共同前向き試験を行った (Kawashita Y. et. al., Int J Oral Maxillofac Surg, 2019) 。その結果、放射線治療のみであれば口腔粘膜炎の重症化予防効果が認められたが、化学療法併用の場合には重症化予防効果は認められなかった。この経験を活かして、頭頸部癌放射線治療に伴う口腔支持療法についての総説を執筆した (Kawashita Y. et. al., Jpn Dent Sci Rev, 2020) 。また、頭頸部癌放射線治療に伴う口腔支持療法を継続していく中で、重度の粘膜炎の発症と関連ある因子を明らかにしたいと考え後ろ向き観察研究を実施し報告してきた (Kawashita Y. et. al., BMC Cancer, 2021) (Kawashita Y. et. al., Biomedicines, 2022) 。 日本で口内炎への適応がある半夏瀉心湯は、頭頸部癌放射線治療に伴う口腔粘膜炎においても処方される。しかし、その効果は十分に知られていない。そのため我々は、半夏瀉心湯を服用することで中程度の放射線性粘膜炎の発症を遅延させることができるかをパイロット研究としてランダム化比較試験を長崎大学病院にて実施した。2023年6月30日で症例登録を終了したので本研究の結果を論文にして投稿している。
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