令和2年度は研究協力者が12名に対して、開発したT-SCOTによる遠隔看護の介入を行った。対象となった患者はS状結腸がん、膵尾部がん、虫垂がん、盲腸がんなどの消化器系、扁平上皮がんなどの肺がん、乳がんなどの患者であった。年齢は50~70代で、分子標的薬や免疫チャックポイント阻害薬など一般的なレジメンによる治療がなされていた。 T-SCOTによるデータ収集では、対象者が測定した血圧、脈拍、体温、SPO2はBluetoothによって測定と同時にクラウドにデータが保存され、遠隔地でモニタリングが可能であった。日々の問診(画面による質問項目)による体調チェックについても、1-2分程度で簡易的に入力も可能であった。対象者はクロスオーバー試験によって、ウォッシュアウト1か月間として介入群・対照群に振り分けた。T-SCOTによる介入では、日々保存されるバイタルサインのデータをモニタリングし、悪化が認められたらTV電話機能を活用し、対象者へ連絡・相談を行った。また特に問題がない状態でも、1週間に1回はメールにてコンタクトを取り、状況の確認を行った。 MDASI-Jによる対照群と介入群との症状の比較では、介入期間3か月で症状13項目および日常生活6項目で有意な差が認められなかった。一方でQOL-ACDによる精神・心理状態および全般的QOLにおいて介入群のほうが有意に得点が高く、QOLが向上していた。T-SCOT内には末梢神経症状など抗がん剤の有害事象に関連した日常生活上の問題を、対処方法が説明されている動画をアップロードしている。対象となった患者たちにはT-SCOTを使用して、見守られている安心感を感じながら、データが可視化されることで行動変容をする動機づけになった。
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