本研究は、多様な病態と乳がんの生物学的特性により多岐に亘る薬物療法を特徴とする再発乳がんに焦点をあて、QOLの維持と病勢コントロール目的で外来通院し薬物療法を継続する再発乳がん患者のレジリエンスを促進する看護介入プログラムの開発を目的とした。 半構成的面接調査では、患者の語りを通して再発の事実や再発治療に対する気持ち・感情・向き合い方、置かれた状況での治療目標の納得と自身が担う役割に関して、自分が考える身近な人生や生活での目標設定、再発という困難な状況に在っても立ち向かおうとする力と源について、再発乳がん患者の心理的状況に係るデータが収集された。この結果から看護介入プログラム内容の1つである「置かれた状況でいだく気持ちを人間の自然な感情と理解し、感情調整を支持する情緒的支援」に係る看護方法や内容に関する手がかりが得られた。 「看護介入プログラム試案の作成」に向けては、日本乳癌学会発行の乳癌診療ガイドラインおよび乳腺専門医の意見、文献を基礎資料に加え、看護支援として『治療過程の納得』、『役割に適う生活調整』、『医療・治療に関する最新情報の入手』を抽出できた。並行して乳がん患者会が患者会所属の乳がん体験者を参加者として実施する自記式質問紙調査に協力し、体験やレジリエンスの様相を問うた。本調査から、レジリエンスの一要素である感情調整を支持する情緒的支援や認知的支援に係る乳がん体験の様態が掴め、プログラム内容の充実に向けた知見が得られた。 研究組織の研究者各所属機関および研究協力施設における新型コロナウィルス感染症対策ならびにそれに基づく対応を最優先としたため、「看護介入プログラム試案の作成」に向け、乳腺専門外来で薬物療法を継続する再発乳がん患者を対象としたパイロットスタディの実施には至らなかったが、今回の研究を通し、「看護介入プログラム」に関する基礎的資料を得ることができた。
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