研究課題/領域番号 |
18K10289
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
末安 民生 岩手医科大学, 看護学部, 教授 (70276872)
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研究分担者 |
西池 絵衣子 慶應義塾大学, 看護医療学部(信濃町), 助教 (90559527)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 精神科看護 / 看護教育 / リフレクティングプロセス / 地域包括ケア |
研究実績の概要 |
本研究の意義は、精神科分野における地域包括ケアに従事しようとする看護師に対しての医療従事者間の対話を重視した早期介入のための教育方法を開発し、検証することである。本研究では、精神科病棟に勤務する看護師が地域包括ケアに向け、①家族からの相談事例、②1年以上の長期入院患者事例、③入院を繰り返す患者事例、④研究対象者が取り組みたい患者の事例についてリフレクティング・プロセスを取り入れた全8回コースの教育プログラムを作成し、2年間にわたって実施し、その評価を行う。 本教育方法の基本的な理念と方法は、ノルウェーの家族療法の理論家であり、臨床家であるトム・アンデルセンによって提唱されたものであり、リフレクティング・プロセスについては臨床実践家への教育方法として世界各国で活用されている。わが国においては主として家族療法の臨床を中心に現任な教育において実績があり今回の研究の手法として採用した。しかし、本研究のような現任教育をセットし、長期間にわたって研究対象者の変化を追跡し評価する方法についてはまだわが国において実践例が極めて少ない。そのため今年度は実施病院に対する説明や参加者をバイアスかけずに招集するための広報、交渉、慎重な調整、説明の徹底に時間を要した。具体的には研究対象病院の全看護師に対する公平な情報提供と、管理者の介在を排した説明を行うことができ、参加者の自由意思を確保することができた。その結果、準備期間をおいて12月から研修実施にかかわる研修を通した研究データの収集を開始した。現在、単科精神科病院においてキャリアの異なる精神科看護師12名を対象に、現在教育プログラムとして取り組みを行っている。これらの成果の一部は、研修会などにおいて報告し、次の研究結果の洗練化に活用したいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究対象施設の探索と候補になった病院との直接的なやり取りに時間を要し、また参加者に対する説明会に時間を全看護職員に公平に実施するなど、参加の自由意思の確保を徹底した。そのため開始時期が遅れたが、教育プログラムの実施後は、会を重ねるごとに順調に進んでいる。この状況を含め、現在2施設目の研究対象施設とのやり取りを行い、2019年度後半から教育プログラムを開始する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、研究者が研究対象者の教育プログラム実施中のより具体的なやり取りの詳細を記録する。現在の教育方法で実施した場合の患者ケアへの直接的な影響については研究結果を待たなくてはならないこともある。ところが、職場内で研修参加者でない職員の反応なども含めた研究参加者の意見も出てきていることから、臨床の実践能力の向上に寄与していることを予見させるようなデータとして分析することが可能であることから、現在行っている方法においても時間の配分や、説明の時間を省くなど細部にわたっての資料収集を強化していきたい。そのためには現在実施している研修のあり方が、これまでの看護現任教育ではほとんどみられていない展開方法であるために生じているデータ収集のための研修方法に対する疑問などを、そのつど聴取してはいるが即答するすることがふさわしくないような事象もあることから、そこで研究参加者から出された疑問や意見、課題を整理して、そのような展開が生じていることも後期のデータ収集に活かしていく。 現在までの参加者の反応としては、リフレクティング・プロセスの手法はすぐに取り入れることは難しいという評価が多勢であるが、一方、事例を通しての教育に対しては看護師自身の普段のケアの姿勢や患者とのかかわりを振り返る機会にもなっていることがわかってきている。と、同時に研修を行っている中でも臨床での活用に向けての研究対象者の活発な討論がみられていることから、それらも研究結果についての示唆として反映させていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究開始が遅くなり、予定していた謝金や旅費を使用することができなかった。そのため当初予定していた予算を次年度に使用し引き続き研究対象者への謝金、旅費に使用する。次年度は当初の計画通りに2か所の研究実施での研修を実施する。そこで得られたわが国での臨床での活用のための課題を整理し、最終結果までの取りまとめを行う。その結果を踏まえて、精神科医療、看護における適応可能性の疑問点について、リフレクティング・プロセス研修のプログラムを有し、海外からの受け入れを行っているフィンランドのケロプタス病院スタッフおよび実践者にスーパーバイズを得るためその旅費および謝金に使用する。
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備考 |
日本精神保健看護学会 教育活動委員会主催研修会 オープンダイアローグとリフレクティング:日本での展開の可能性を探る 2019年3月21日 TKP仙台南町通カンファレンスセンター8階 ホール8A
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