研究実績の概要 |
本研究の目的は精神障害者の学習特性である言語学習の苦手さと体験学習が得意なことに対応した禁煙の動機付けプログラムを開発することである.このためロールプレイを多用した学習形式を採用した.従来我々の研究はシングルセッションであったが本研究は複数回セッションと作業療法的介入も併用したことが特徴である. 本研究は、クラスター比較対照試験を採用した.介入群に割り振られた事業所の対象者には本プログラム6セッションを2週間に渡り実施した.そのセッションの前にはプレ調査を、セッション後にはポスト調査を実施した。1セッションに要する時間は30分程度であった.対照群に割り振られた事業所の対象者にはプレ調査の2週間後を目安にポスト調査を実施した. 本プログラムの効果を検証するために,介入群9名対照群4名に分け,プログラム前後で,KTSND・禁煙意欲・禁煙自信・喫煙誘惑への対処自信の4評価指標と喫煙本数をJASPのデフォルトである多変量コーシー分布を用いてベイズ的分析による2元配置分散分析を行い,帰無仮説に対する対立仮説の支持する大きさを求めた. その結果,すべての指標で交互作用を支持する証拠があるとはいえなかった.次に群間の主効果は,KTSND・禁煙意欲・,禁煙自信・喫煙誘惑への対処自信で効果を極僅かに支持した.また時期による主効果は喫煙本数で介入前後の効果を極僅かに支持した.さらに主効果を詳細に分析すると,介入群の禁煙自信で極僅かに,喫煙本数は中程度に前後差を支持した.また介入後のKTSNDと喫煙誘惑への対処自信で群間の差があることを極僅かに支持した. つまり精神障害者で喫煙している者に本プログラム介入すると僅かだが認知・心理面に良い影響があることが確認できた.本研究限界は感染症拡大の影響で対象者が少ないことである.そのため対象者を増やすと異なる結果が生じる可能性もあり,今後も研究を継続したい.
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