研究課題/領域番号 |
18K10304
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
牛久保 美津子 群馬大学, 大学院保健学研究科, 教授 (90213412)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 筋萎縮性側索硬化症 / 認知機能障害 / 多疾患併存 / マルチモビディティ / 看護支援 / 難病 |
研究実績の概要 |
2021年度は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)と認知機能障害を有することに対する看護師の認知度と支援方法に関するまとめを行い、論文公表した。認知機能障害を有するALS患者に関する看護師の認知度は低く、研修の機会等をつくり、認知度向上させる方策が必要であることを提示した。加えて、看護師のALS患者(以下,対象者)を看護する際に,看護師がどのような場面で悩み,どのような工夫をし,どのような困難を抱えているのかを明らかにすることを目的とし、認知機能障害を有するALS療養者の支援経験を有する看護師を対象としてフォーカスグループミーティングを実施し、対象患者へのケア提供に関して既に実施している、あるいは提案したい実践的な方策に関するデータを分析し、成果を公表した。看護師が対象患者のケアで苦労した場面は、3カテゴリー:「日常生活における看護援助に対する患者の強いこだわり」、「患者の看護師に対する問題行動」、「患者の意思の疎通や理解」が抽出された。これらの状況は、看護師にとってストレスとなり、ケアの質低下に影響していたことが明らかとなった。対象患者をケアする際の実践的な対策として、5カテゴリー:「認知機能障害評価」「日常生活援助に対する患者の強いこだわりへの対応」「コミュニケーション」「意思決定支援」「病院と地域との連携」が抽出された。認知機能障害の評価・診断結果を共有するためには、院内での多職種連携、早い段階からの院内と地域の連携が必要である。ガイドラインやケアマニュアルの作成は、患者の強いこだわりへの対応やケア提供の統一につながる可能性があることを示した。 また、ALSの併存症例に関する支援について文献から行い検討するため、「認知症」と「ALS」の併存症例、および意思決定支援に影響するであろう「がん」との併存に焦点をあてて、症例を集積している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19の影響から、症例にアクセスすることが困難である。これまでの研究成果を入念に分析し論文公表した。また、文献をくまなく調査し、ALSの併存症例およびそれらの症例の支援に関するデータを集積することに研究方法を変更し、研究成果を打ち出すことに努めている。
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今後の研究の推進方策 |
医学中央雑誌Webをいろいろ検索したところ、会議録ではあるが、筋萎縮性側索硬化症(ALS)と認知機能障害を有する症例に関する多数の報告が検索された。多疾患併存として、認知機能障害に加え、がんとの併発症例に関する症例報告を検索したところ、十数例確保できた。前者は、医師による診断や治療に焦点をあてた報告が多かったが、生活支援上の困難に関するコメディカルによる症例報告がいくつか得ることができた。これらは、多職種連携に関する記述もあることから、これらの症例を集積・分析し、ALSと認知機能障害に関する支援についての考察を行っていく予定である。さらに、がんとの併存症例についても同時並行ですすめていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響によりデータ収集がうまく行かず、また教育業務への負担が増大し、研究が計画通りに進めることが極めて困難であった。本テーマに即した形で、併存疾患をかかえる筋萎縮性側索硬化症療養者に関する支援について、文献検討から事例を収集し、解析し論文投稿をめざす予定である。また、筋萎縮性側索硬化症の併存症例として、がんも加えて、同様に、すでに公表されている文献から、症例を収集している。研究補助者を雇用し、データの解析を行い、新たな論文投稿をめざす。
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