研究実績の概要 |
本年度は2019年に発刊した「包括的暴力防止プログラムトレーニングマニュアル(中央法規刊)」に掲載したケアシートを昨年に引き続き試行し分析、結果をまとめた。本年度は対象となっていた病棟が新型コロナ感染症対応病棟であったためにほとんど研究的な取り組みはなされない状況であり、結果トータルで3病院の3精神科病棟から9名に試行された。シートには看護師用に患者の攻撃に対する看護師の態度(ATAS:Attitude Towards Aggression Scale)と病棟風土(Essen-CESJ:Essen Climate Evaluation Schema)を,当事者にはEssen-CESJが開始前と開始一か月後に質問された。また、自由記述による回答を求めてあったが、対象数が少なかったことを補完するために、さらに,対象病棟3名の病棟師長に対して聞き取り調査を行った。分析として評価項目の前後比較(ウイルコクソンの検定)を,自由記述,聞き取り内容は質的内容分析を行った。結果9名のうち,当事者が退院により事後の調査がないものが2名いた。分析の結果,看護師の患者の攻撃に対する否定的態度が減少(Z=-2.12,p=0.034),当事者のEssen安全の実感が増加(Z=-2.13,p=0.03)した。効果量は中程度であった。質的内容分析からシートに関する使用感,気づきについて意味内容をコーディングしたところ,ケアシートはリスクを考える上で患者の体験そのものが保護因子となること、また、関係の在り方がリスクに影響することがわかり【リスクへの新しい視点】があった。一方で、組み込まれた質問(評価尺度)が難解であること、意図を知って使わなければ「義務感」が生じてしまう、などの改善も必要であることがわかった。ケアシートについては雑誌精神科看護誌でもCVPPPダイジェストマニュアルとして紹介した。
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