研究課題/領域番号 |
18K10328
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
大釜 徳政 創価大学, 看護学部, 教授 (50382247)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 放射線療法 / 高齢期口腔がん患者 / 認知機能低下 / 日内変動 / 意思疎通性 / 会話正確性 / 会話明瞭性 / 会話ケアモデル |
研究実績の概要 |
2022年度は、2021年度の成果をふまえ、放射線療法を受ける高齢期口腔癌患者における認知機能の低下の具体的状況、有害事象、個人特性(年齢、性別、義歯装着の有無、喫煙歴の有無、教育年数)といった項目間の関係性を因果モデルとして構築している。Covidの感染状況によりデータ収集に遅れが出ている一方で次の成果が認められた。 高齢期口腔癌患者の会話上の意思疎通性について、「表記できない発音」「発音しようとする音が別の音に置き換わる」「発語のアクセントの変調」「発音使用とすることばを繰り返す」「口唇の動きの低下」など12項目が認知機能低下と因果関係がある。会話正確性について、「短文で正確性を担保する」「会話時間の短縮で正確性を担保する」「通常使用しない意味合いの言葉を使用する」「会話の意味内容のズレが多くなる」「しぐさとジェスチャーで正確性を担保することが少ない」など9項目が認知機能低下と因果関係がある。会話流暢性について、「一定の会話スピードで流暢性が保てない」「抑揚の乱れで流暢性が保てない」「つっかえつっかえで会話が進む」「意味内容の修正で会話時間の延長を認める」など7項目が認知機能低下と因果関係がある。 認知機能低下と関係する意思疎通性、会話正確性、会話流暢性は、有害事象の具体的症状である[口の渇く感覚がある][唾液が泡沫状である][口の中が乾燥して口臭が気になる][口の粘つく感覚がある][口のカビつく感覚がある][口の中がひび割れる感覚がある][舌や粘膜が熱っぽい感覚がある][舌や粘膜がぴりぴりする感覚がある][食べ物を口に入れるとしみる感覚がある][常に舌や粘膜が疼くように痛む感覚がある][痛みにより無気力になる感覚がある][わずかな刺激で出血する]の12症状を複合的に組み合わさり、また【朝】に症状の増強を認める場合に認知機能の低下に影響する可能性が推測できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
Covid19の影響で、本学の指示ならびにデータ収集先の施設が受け入れ困難な状況下にあり、当初の計画より大幅に遅れていたが、今年度より徐々に状況が改善されている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、口腔粘膜炎・口腔内乾燥症状、会話(意思疎通性・会話正確性・会話流暢性)、認知機能と日内変動および個人特性との因果関係を踏まえ、これまでの調査結果を基盤として、累積照射線量別の有害事象を緩和させ、生活行動上の意思疎通性・会話正確性・会話流暢性を促進させながら認知機能低下を予防する会話ケアモデルの構築を図る。 【20~30Gy意志疎通性の促進】口腔粘膜炎による疼痛を増強させる発音時の舌・口腔周囲筋群の動きを撮影し、これを高齢期患者に理解しやすいよう視聴覚教材の一部として組み込みながら、患者個々で異なる単音節の歪み音と正常音の把握・確認するための「視覚・聴覚的弁別訓練」、正しい構音点を導く「構音点法」、歪み音を正常音に近づける「漸次接近法」を実施する。口腔粘膜炎と口腔内乾燥に対して、朝・昼・夕食30分前より口腔体操、オーラルバランスを用いた保湿ケアを実施する。 【30~40Gyの時期における会話正確性の促進】:上記①のケアを継続させながら、ICレコーダーを用いて、どのような歪み音を含む言葉が会話正確性を低下させているかを明確化した上で、疼痛を増強させず、高齢期患者の使用頻度に応じた代替語の選定を行う。その後、代替語を文節に取り入れた会話を導入し会話正確性を高める代替構音による会話習慣法、会話の時間効率を図り舌・粘膜の疼痛増強を防ぐ舌-口蓋接触パターン評価および構音に関する悪習慣除去に関する教育的介入を行う。 【50Gy~治療後7日以内の時期における会話流暢性の促進】:上記①②のケアを継続させながら、疼痛の緩和とともに会話の途切れ・リズムと抑揚の乱れを軽減する会話スピードと代替語を使用するタイミングの獲得、構音機能のパワーを切り替える話題・会話相手の選定についての教育的介入を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
Covidの影響でデータ収集の機会が当初の計画より減少したが、今年度の調査費として使用する計画である。また、従来の計画通り、当該調査の洋雑誌への投稿費とする。
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