本研究は、生命を脅かす疾患に直面した患者のshared decision-making (SDM)を支える多職種協働意思決定支援モデルを構築することを目的とし、特に生命を脅かす代表的な疾患である重症心不全患者のSDMにおいて、看護師が多職種協働での意思決定支援にどのように参画しているかを明らかにすることに焦点を絞った。 まずは、国内の現状を明らかにするために、2019年に急性・重症患者看護専門看護師10名を対象に半構造化面接調査を行った。面接調査を質的に分析し、多職種協働によるSDMのなかでの看護師の取り組みの実態をまとめ、「重症心不全患者の治療選択におけるSDMへの看護師参画に対する急性・重症患者看護専門看護師の認識(稲垣,2020)」として論文発表した。2021年度からは、多職種協働意思決定支援モデルについて検討を試みたが、先行研究では看護師の役割が明確化されていないため、多職種のなかで看護師が担う役割を明確にする必要があると考え、2019年に実施した面接調査内容を新たな視点で質的に再分析した。再分析では、SDMにおける重症心不全の特性とSDMにおけるクリティカルケア看護師の役割を明らかにすることを目的とし、結果をまとめた(博士論文として提出した)。 2022年度は、「重症心不全のSDMにおけるクリティカルケア看護師の役割」として、論文執筆を完了し投稿した。今後は、本研究で明らかになったSDMへの看護師参画の内容、重症心不全患者の特性、看護師の役割を土台とし、実践と研究をリンクさせる状況特定理論の構築へと発展させる計画である。
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