研究課題/領域番号 |
18K10333
|
研究機関 | 天理医療大学 |
研究代表者 |
林 みよ子 天理医療大学, 医療学部, 教授 (50362380)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 脳血管疾患患者 / 家族 / 在宅移行支援 / 多職種連携 / 質問紙調査 / 実態調査 |
研究実績の概要 |
本研究は、脳血管疾患患者の急性期から在宅移行期まで連続する多職種連携在宅移行支援プログラムの開発を目指すため、今年度は、経験10年以上の看護師を対象に脳血管疾患患者の在宅移行支援の実態を明らかにする全国質問紙調査を行なった。 質問紙を1607施設に依頼し282名から回収された(所属区分:一般病棟57.5%、回リハ病棟17.1%、救急・ICU・SCU22.2%)。在宅移行支援経験者は約半数で、9割が部署間連携があると回答し、MSW ・リハスタッフ・退院調整看護師・訪問看護師との連携を報告した。一方、約4割が在宅移行支援に看護師に関する課題があるとし、在宅移行支援への関心や意識の低さ・経験や知識のなさ、自宅での生活に関するイメージ化の不足を挙げた。他にも、在院期間の短さ、家族の協力の不足、患者の状態に対する家族の認識不足が在宅移行支援の課題とされた。調査した9援助実施度の4段階自己評価の平均点は、患者の身体状態を安定させる(3.54)が最も高く、患者のADL自立を促進する(3.41)・患者の自宅退院の希望を確認する(3.41)・患者の自宅退院可能性を検討する(3.39)・家族の在宅介護の希望を確認する(3.39)・家族の在宅介護の受け入れを確認する(3.33)・家族の心理状態を安定させる(3.13)・患者の機能障害の現実認知を促進する(3.07)と続き、家族に介護に必要な技術を指導する(2.97)が最も低かった。援助実施度は所属による違いはあったものの有意差はなかった。 この結果から、経験10年以上の看護師はどの病期においても関係する職種と連携しながら在宅移行支援を実施していることが明らかとなり、その援助内容には病期ごとの特徴があること、在宅移行支援に関する関心や知識や経験の不足・自宅での生活のイメージ不足など看護師の要因が効果的な在宅移行支援を阻害することが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目は、協力依頼書発送が予定より多少遅れたが、計画どおり質問紙調査を終了し、この調査結果を踏まえて次年度の面接調査の研究計画書を作成し、研究者所属施設の倫理審査委員会に提出した。また、今年度の調査結果を学会で発表するため、抄録を作成しているところである。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度の質問紙調査で明らかとなった臨床10年以上の看護師の在宅移行支援の量的実態から、今後よりスムーズかつ効果的・効率的に在宅移行支援を継続できるプログラム開発のためには、臨床経験10年を超える熟練看護師の行う質の高い看護実践、それを可能にするために活用している知識や技術、そしてそれらを獲得してきたプロセスを詳細に明らかにする必要性が示唆された。そこで、次年度は、脳血管疾患患者の在宅移行に向けた看護を実践する熟練看護師のExpertiseとその熟達プロセスを質的に明らかにし、今年度の質問紙調査を含め、量的・質的な実態から質の高い看護師による急性期から在宅移行期まで連続する在宅看護支援の検討を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
質問紙調査の対象者数と回答者が少なかったために調査実施にかかる費用が計画より安価であった。また、調査開始が遅れてデータ分析が遅れたために予定していた国際学会での発表を次年度に見送ったこと、今まで使用してきたPCで対応し新規購入を次年度に見送ったことによって、計画した金額を下回った。 次年度は、今年度行なった調査結果を国際学会で発表する予定で準備を進めていること、研究を円滑に進める上ではやはりPC1台の購入が必要であることから、今年度の計画分を次年度使用する。
|