研究課題
本研究の目的は経口抗がん剤治療を行う就労がん患者の服薬アドヒアランス支援プログラムを開発し、介入効果を検証することである。2018年度は面接調査の実施に向けた準備を行い、2019年度から経口抗がん剤治療中の就労がん患者の服薬アドヒアランス の向上に向けた医療者(医師、看護師、薬剤師)の支援の実態を明らかにすることを目的とした面接調査を開始した。なお、薬剤師は地域の保険薬局に勤務する薬剤師も対象とした。調査は多様な就労形態のがん患者への支援状況を知るために、第1次産業の従事者が多いA県と第2次産業、第3次産業が多いB 県の2県で実施した。面接調査内容は、治療前の患者の就労に関する確認事項とその情報収集方法、治療中に患者や家族からの就労と治療との調整に関する相談内容や支援内容についてなどであった。2020、2021年度にかけてA県での面接調査に向け調整を行ったが、COVID-19感染拡大により医療者との接触が困難となり、一部調査の実施を断念した。計画から調査対象者に偏りが生じることとなったため、面接調査の分析の視点を職種による就労支援や服薬アドヒアランスへの支援の実態へと変更した。19名の面接調査の分析結果から、医師、薬剤師、看護師すべての職種で患者の就労状況について情報収集は行っていたが、就労状況を考慮した服薬管理や副作用の対処に関する支援については、職種間の連携が乏しくなっていたり、継続した支援が難しい現状があることが明らかとなった。2021~2022年度はプログラムの原案となる経口抗がん治療中の患者への教育ツール(MASCCTM Oral Agent Teaching ToolVer2)の翻訳を行い、日本語版を完成させThe Multinational Association of Supportive Care in Cancer (MASCC)のホームページに掲載することができた。