養護者による高齢者虐待の場合、困難事例としては共依存ケースが典型例としてあげられる。虐待されている高齢者が、虐待者である夫や息子等をかばって虐待されていることを隠す、あるいは援助職が虐待者と被虐待者をせっかく分離しても、被虐待者が自ら虐待者のもとに戻ろうとするケースである。本研究では、養護者による高齢者虐待の共依存ケースに対する援助職のアセスメント・対応コンピテンシーを評価する尺度の開発を目指して、尺度案を作成、その信頼性、妥当性を確認するために質問紙調査を実施した。分析対象者は329名で、一般職が7割、職種は3分の2が介護福祉士であった。因子分析の結果からは、作成したコンピテンシー尺度が家族内の共依存のアセスメント、養護者と被虐待者のアセスメント、職員間や関係機関との連携と仕事への構え、虐待を認知した時の対応、専門的知識の5因子、27項目から構成されていることが掌握された。Cronbachのα信頼性係数は0.94であった。また5因子において、ところどころ業態別、勤務年数別、国家資格の保有別にて有意差が認められた。相談支援に携わっている者、社会福祉士資格、介護支援専門員資格保有者のコンピテンシーがそれ以外の群と比較して高い傾向にあった。諸外国の高齢者虐待の先行所見を踏まえて考察した。
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