本研究の主要目的は、①自殺企図者を外来場面で看護師が支援する際に必要な要素の抽出、②入院療養中の自殺企図者の地域移行支援における課題の抽出、③外来・入院場面で自殺企図者を支援するための連携およびケアスキルの確立であった。目的①では、看護師がどのような支援を行っているのかを明らかにするために、まず自殺企図歴がある患者の体験にフォーカスし、自殺企図歴がある患者自身が捉える支援内容を質的研究(非構造化面接)によって明らかにした。2020年度は、目的②にあたる、精神科・救急外来・自殺ハイリスク者(がんや難病をもつ患者等)と関わる機会が多い診療科で働く看護師を対象に、自殺予防ケアに焦点化した地域移行支援の実際を明らかにするための調査に取り掛かる準備を進めると同時に、地域移行支援を阻む要素として多職種連携が機能しない実情などを整理した。 ここまでの成果より、自殺企図者の「生きづらさ」が浮き彫りになったが、本研究計画では看護支援に着眼していたこともあり、自殺企図者の背景の詳細については扱われていないという課題があった。しかし、COVID-19の影響もあり、「生きづらさ」を感じている人が増え、それに伴い自殺者数の再増加が懸念される中、自殺再企図抑止の支援には「生きづらさ」への対応という切り口が必須であり、それには多職種連携の視点を研究計画に盛り込んだ研究計画へと発展させることが重要であると認識した。 そこで、自殺企図者の「生きづらさ」に対応する多職種協働支援のあり方を系統的に明らかにするとともに、自殺企図者へのより実践的な支援プログラムの作成と精錬化を目指すことにした。最終年度前年度応募研究課題が採択されたため、本研究計画を次の研究計画(2021年度 基盤研究(C) 21K10728)へ移行することとした。
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