研究課題/領域番号 |
18K10361
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研究機関 | 秀明大学 |
研究代表者 |
瀬戸口 ひとみ 秀明大学, 看護学部, 講師 (90594391)
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研究分担者 |
鈴木 英子 国際医療福祉大学, 医療福祉学研究科, 教授 (20299879)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 折り合い / 統合失調症者 / 地域移行 / 尺度 |
研究実績の概要 |
本研究は、病いと「折り合い」をつけることが統合失調症者が自分らしく生きることにつながり、自分らしく生きることで統合失調症者の地域生活の質の向上に寄与するのではないかとの考えに基づき実施している研究である。 当該年度は、先行研究で明らかにした「折り合い」の概念をもとに統合失調症者の病いと「折り合い」をつける能力尺度の開発を行った。まず、当事者へのインタビューをもとに質的研究から明らかになった「折り合い」の概念と先行研究から様々な概念を総合的に収集し、項目プールを作成した。項目プールを下位概念に分類し、下位概念が適切であるか以下の方法で妥当性を検討した。表面的妥当性は、臨床経験5年以上の様々な立場の看護師(看護師長・主任・スタッフナース)および看護系大学の教員計20名で意味不明な質問項目、重複している項目、返答困難な表現等について検討した。内容的妥当性は、表面的妥当性を検討する際、同時にそれぞれの質問項目が、統合失調症者の病いとの「折り合い」をみるための構成要素を判定するための項目であるか、質問項目の重複の有無、測定内容の欠損の有無、表現の不明瞭さなどについて併せて3回程検討し,試作版の開発を行った。 現在、関東圏の家族会、福祉サービス事業所や当事者会に所属し地域で生活する統合失調症者300名を対象に質問紙調査を依頼・調査を実施したところである。今後、データ分析を実施する。尚、折り合い」をつける能力尺度開発については、2019年1月に国際学会にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度は、先行研究で明らかにした「折り合い」の概念等をもとに統合失調症者の病いと「折り合い」をつける能力尺度の開発を行った。まず、先行研究他様々な概念を総合的に収集し、項目プールを作成した。項目プールを下位概念に分類し、下位概念が適切であるか妥当性を検討して尺度試作版を作成する過程で、表面的妥当性・内容的妥当性の検討を、臨床経験5年以上の様々な立場の看護師(看護師長・主任・スタッフナース)と看護系大学の教員約20名で意味不明な質問項目、重複している項目、返答困難な表現等について検討を行った。併せて、それぞれの質問項目が、統合失調症者の病いとの「折り合い」をみるための構成要素を判定するための項目であるか、質問項目の重複の有無、測定内容の欠損の有無、表現の不明瞭さなどについて検討した。しかし、表面的妥当性と内容的妥当性の検討が予定していた期間では終了せず、作成に時間を要した。 また、調査の実施についても、家族会、福祉サービス事業所、当事者会など多くの施設に調査を依頼したが、統合失調症の当事者が見込みより少なく調査を引き受けてくれる施設の選定と依頼に時間を要したことも、研究が当初の予定より遅れたことの原因の一つである。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策としては、調査した質問紙から下記の内容について妥当性を検討する。 構成概念妥当性は尺度がどの程度構成概念を測定しているか因子分析を行う。基準影響妥当性は、作成した病いとの「折り合い」尺度の概念と類似する構成概念の因子分析の結果から、因子負荷量の高い項目を、それぞれ10項目ずつ用いて調査し、ピアソン積率相関係数を算出し確認する。弁別的妥当性は因子的妥当性のあった項目に対して上位-下位分析(G-P分析)を行い、質問項目の中で排除すべき項目がないか確認を行う。信頼性については、最終的に抽出された尺度全体と下位尺度ごとのクロンバッハのα係数を算出し、確認する。 次に統合失調症者が自分らしく地域で生活するために折り合い」をつける能力への影響要因を明らかにするために、全国の公益社団法人や地域包括支援センターに所属している、地域で生活する統合失調症者500名を対象に、無記名自記式質問紙を用いた横断研究を行う。そのために、作成した尺度項目以外の質問紙を作成し、調査を実施する。 分析方法は、対象者の属性の検討、有意差について、平均値はt検定および一元配置分散分析、多重比較、比率はχ2検定を行う。推測統計は、「折り合い」能力への影響を検討するため、重回帰分析および共分散構造分析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用計画としては、統合失調症者が自分らしく地域で生活するために折り合い」をつける能力への影響要因を明らかにするために、全国の公益社団法人や地域包括支援センターに所属している、地域で生活する統合失調症者500名を対象に、無記名自記式質問紙を用いた横断研究を行う予定である。そのための調査に関わる費用として印刷費用、通信費、文房具等の雑費が研究費として必要と考える。 また、調査後分析のためのデータ入力および成果発表のための学会発表・論文投稿も予定しているためそれらのデータ入力のための費用、旅費や翻訳費用も併せて計画中である。
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