研究課題/領域番号 |
18K10364
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
長瀬 雅子 順天堂大学, 医療看護学部, 先任准教授 (90338765)
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研究分担者 |
村岡 宏子 順天堂大学, 医療看護学研究科, 教授 (60258978)
瀬尾 昌枝 順天堂大学, 医療看護学部, 助教 (70613272)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 神経難病 / 緩和ケアニーズ / 治療選択 |
研究実績の概要 |
2018年度は、進行性神経難病者のエンドオブライフを見据えた緩和ケアニーズを解明することを目的に、神経難病者を対象とした調査準備と共に、本調査に先立ちパーキンソン病患者と筋萎縮性側悪硬化症患者にプレインタビューを行った。調査準備では、患者自身の「意思」とは何か、治療の中断や中止、尊厳死の倫理性について文献レビューを行い、2019年度に公表予定である。 インタビュー調査では、医療やケアの場において、患者の「生」「生活」が限定されること、「尊厳ある死」については議論されるが、患者にとってのささやかな願いや「尊厳ある生(生活)」については無視されることが多いという体験が語られた。患者は、「死」を強調するがゆえに、障害があっても生きているのだということ、どのようにその生を支えるのかという議論や実現が不足していると感じていた。また、治療選択も場面が、医療者中心に行われ、「患者にとっての最適なタイミング」を決めるのも医療者自身であり、「患者の言葉」に耳が傾けられることはほとんどない現実も語られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
調査準備のための文献レビューに時間がかかったため、本調査のための倫理審査が遅延した。そのため、2018年度中に開始する予定だったデータ収集を実施できていない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
2018年、厚生労働省は「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」を策定した。これは、従来のガイドラインを改訂したものである。こうしたガイドラインは、医療に従事する専門職にとって自らの判断や行為を正当化するために必要とされる。しかしながら、尊厳死、あるいは「本人の意思による」治療の中止に関する倫理性について、医療の場で議論されることがない。「尊厳」「本人の意思」によって、「自死」を幇助する行為である可能性が隠され、かつ、「本人が意思を表す」ことを暗に強制する不可視な権力の存在に無自覚であり続けているのではないかと考える。これを帰無仮説と位置づけ、患者へのインタビュー調査を実施し、そのデータを分析することで、対立仮説を明らかにする予定である。 また、並行して、日本ほど「尊厳」を強調せずにアドバンス・ケア・プランニング(ACP)を実施している海外の取り組みを参考に、日本でのACPの実際的で現実的な方法論を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度に予定していた国際学会での発表や情報収集が実施できなかった。これについては、2019年度に実施する予定である。
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