炎症性腸疾患を持ちながら生活する人は年々増加している。ほとんどの患者は若い時に発症し、生涯にわたって治療を継続する。再燃を繰り返しやすい疾患であるが、食事療法や栄養療法、自己注射などのセルフケアによって、ある程度寛解維持させることも可能である。これらのセルフケア能力を高め、寛解期を維持することができれば患者のQOLの向上につながる。しかしながら毎日の生活で健康行動を継続するのは容易ではない。そこで炎症性腸疾患を好発する若い世代が日常的に使っているスマートフォンやタブレット、PCを用いたセルフケアのためのツールとしてセルフケア支援アプリ「IBDノート」を開発した。このアプリでは、自ら定めた目標(マイゴール)の達成に向けた毎日の行動評価(マイアクション)と、症状や服薬状況に関する記録を入力するポートフォリオ機能およびSNS機能を持つ。 モニター患者からの意見を聞き、受診や自己注射日などのリマインド機能や利用者間の交流ができる機能、健康状態を俯瞰する一覧表やグラフ機能をバージョンアップし、アプリを完成させ無料で公開している。利用時および利用1か月後のアンケート調査では、未だデータ数は十分ではないが、セルフケアに役立つと回答する利用者が多かった。ただし途中で中断してしまう場合も多くみられた。 2020年度は、入院患者に対しアプリを使用し面接での看護支援を行う準備を進めていたが、新型コロナウィルス拡大により入院患者と面接が出来なかった。そのような中、オンライン診療を利用する患者が増えている状況から、今後は、本セルフケア支援アプリの情報を共有することによって、オンラインでの診療や看護を行うシステムを構築していく予定である。
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