研究課題/領域番号 |
18K10368
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
深沢 裕子 金沢医科大学, 看護学部, 客員教授 (00530437)
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研究分担者 |
長山 豊 金沢医科大学, 看護学部, 准教授 (10636062)
田中 浩二 金沢大学, 保健学系, 教授 (40507373)
新井 里美 金沢医科大学, 看護学部, 講師 (90802413)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 統合失調症 / 過覚醒 / セルフチェック / コントロール不能感 / 恐怖 / 過敏さ / 頭痛 / 心の変調感 |
研究実績の概要 |
研究対象者に、本調査のために作成したパンフレット「過覚醒状態についてのセルフチェック―心の余裕度を観察しましょう―」を用いて説明し、過覚醒状態(心の余裕度)についてセルフチェックを行ってもらった。1~2週間に1回の頻度で継続的にインタビューを実施し、セルフチェック結果を研究対象者に話してもらった。この調査を、2か月間、3名の対象者に対して実施した。他の1名は、4か月間の調査を実施した。うち2名については、引き続き令和5年度も調査を継続している。 過覚醒状態について表現した対象者の語りの分析結果1名分を報告する。対象者は、「相手に対して怒り・恨み・嫉妬などの感情が湧き、伝わってしまうと感じる」時に過覚醒状態になると話し、過覚醒状態を『頭が一杯一杯になる』・『バランスがめちゃくちゃになる』・『恐怖』・『パニック』と感じ取っていた。また、「聞こえてくる音に自分に関する意味を感じる」時に過覚醒状態になると話し、過覚醒状態を『頭が痛い』、『心が暴れる』と感じ取っていた。「内的な思考が活発になる」時にも過覚醒状態になると話し、過覚醒状態を『心の中が変になる』・『わからなくなる』と感じ取っていた。これらコントロール不能感・恐怖感・過敏さ・頭痛・心の変調感を、過覚醒状態をとらえる手がかりとして利用することができるか、研究グループで検討した。その結果、これらの表現が、精神症状によって体験している感覚と重なるため、覚醒レベルを捉えるためには有用ではないという判断となった。そこで、0~10の11段階のスケールで覚醒レベルを査定する方法を用いて調査を継続することになった。 この対象者が過覚醒になるのは、精神症状が生じた時と、家族への欲求不満が生じた時であった。今後は、過覚醒状態を鎮静する対処が効果的であった場合とそうではない場合、それぞれのその後の精神症状変化についてさらに詳細に調査・分析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染リスクが最小限になるようなデータ収集方法に変更した研究計画で、協力依頼したが対象者を得ることができなかった。再度データ取集方法を変更し倫理委員会の承認を得た。このような事情のため、調査開始が10月となった。10月以後は、データ収集・分析を進めることができている。また対象者が4名と少数であるため、事例研究として分析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
【今後の推進方策】令和5年度計画の1点目は、0~10の11段階のスケールで覚醒レベルを査定することを対象者に提案し、調査・分析を行うことである。2点目は、過覚醒状態を鎮静する対処が効果的であった場合とそうではない場合、それぞれのその後の精神状態の変化についてさらに詳細に調査・分析を行うことである。 【変更点】 ・協力が得られた対象者が4名であったので、事例研究を中心とした分析方法に変更する。 ・対象者は、地域生活が行えている人であるが、精神症状が毎日生じている。そのため、寛解状態からの再燃防止を目指した自己モニタリング技術の開発ではなく、精神症状増悪防止を目指した過覚醒モニタリング技術の開発を行う。 ・「過覚醒状態のセルフモニタリング技術を患者が修得できるようにするには、患者とどのように共同し支持すればよいかを解説した訪問看護師のための教材」を作成し、実用性を検証することを目指していた。しかし、調査開始が遅れたため、訪問看護師のための教材を作成するところまで、令和5年度に進めることができない見込みとなった。しかし、「過覚醒状態のセルフモニタリング技術を患者が修得できるようにするには、患者とどのように共同し支持すればよいか」ということについて、示唆を得ることができると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
主に次の3つの理由により、未使用額が生じた。①新型コロナウィルス感染リスクのため、調査協力者が得られ調査開始できたのが10月となった。②対象者数が当初計画したよりも少なくなった。③逐語録作成を研究者自身で行った。 令和5年度は、調査旅費、逐語録作成委託費、調査対象者への謝礼品、郵送料、消耗品、図書、文献取り寄せ、論文翻訳、報告書冊子印刷代に助成金を使用する。
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