研究実績の概要 |
【目的】妊娠中期の客観的口腔内所見と妊娠初期の歯周病自覚症状および妊娠前の口腔ケアとの関連を明らかにする。【方法】妊娠15週までの妊婦32名に,妊娠初期の歯周病自覚症状と妊娠前の口腔ケアについて質問紙調査を行った。妊娠24~27週の歯科健康診査による客観的口腔所見として,プラーク付着割合plaqe control record(以下,PCR)(%),歯周ポケット最大値(mm),歯周ポケット平均値(mm),出血歯数割合(%),出血点割合(%)を収集した。Community Periodontal Index(CPI)が3以上を歯周病と定義した。客観的口腔所見と歯周病自覚症状および口腔ケア項目との間で有意差検定を行った。【結果】歯周病を有する妊婦は29名(90.6%)であった。「歯肉の腫れ」を自覚していない妊婦は自覚している妊婦と比較してPCRが有意に高かった(p=0.04)。「口臭」を自覚しない妊婦は自覚する妊婦と比較し,歯周ポケット最大値が有意に深かった(p-0.022)。口腔ケアでは「小さく振動させて磨く」「定期的な歯科健診」を実施していた妊婦は実施していなかった妊婦と比較して歯周ポケット最大値が有意に短かった(p=0.024,p=0.016)。「歯間,歯肉の境目を磨く」を実施していた妊婦は,実施していなかった妊婦と比較して出血歯数割合と出血点割合が有意に低かった(p=0.0001,p=0.003)。【考察】CPI3以上の妊婦は90.6%となり,先行研究と比較して高率となった。CPIスコアが3以上であっても,歯周病の活動性を表す歯肉出血がない者が存在することがあるため,歯肉出血の有無も含めた再検討の必要性がある。妊娠前の口腔ケアでは,「小さく振動させて磨く」「歯間,歯肉の境目を磨く」を意識した歯磨き習慣と「定期的な歯科健診」が妊娠中の客観的口腔所見を良好すると示唆された。
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