研究課題/領域番号 |
18K10395
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
長島 玲子 島根大学, 医学部, 特別協力研究員 (00310805)
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研究分担者 |
中谷 陽子 島根県立大学, 看護栄養学部, 講師 (20817530)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 分娩後 / 腹圧性尿失禁 / 大殿筋収縮運動 / 骨盤底 / 形態学的評価 / 骨盤底筋訓練 |
研究実績の概要 |
分析対象者は、分娩後4か月以降も尿漏れが持続し、大殿筋収縮運動を3か月間継続した23名である。臨床症状である尿漏れは、国際尿禁制学会の60分パッドテストと尿失禁症状・QOL評価質問票(ICIQ-SF)で評価した。尿漏れは全例において1か月ごとに減少し、有意に改善した。主観的評価として、「トイレに行く回数が少なくなった」「一回の排尿量が多くなった」「ウエストが細くなった」「便通がよくなった」「ヒップアップになった」など、尿漏れ以外の副次的な効果も得られた。大殿筋収縮運動を継続することにより、尿漏れ症状が改善した。このことは、骨盤底筋の収縮感覚が無く、骨盤底筋訓練では効果が得られない腹圧性尿失禁患者に、簡便な保存的療法として大殿筋収縮運動を提供することができる。 尿漏れが改善した根拠となるMR画像による骨盤底の形態学的評価では、MRIのシネ画像(正中矢状断)とT2 (冠状断)により膀胱頚部の可動性や尿道および尿道周辺の支持構造を評価した。膀胱頚部の基準線からの高さと仙骨からの位置を初回と1か月ごとに比較した。安静時における膀胱頚部の高さは、初回17.0±5.2㎜、3か月後18.8±5.3㎜であり、膀胱頚部の位置は、初回95.1±6.1㎜、3か月後95.3±6.5㎜といずれも有意な差を認めなかった。大殿筋収縮時における膀胱頚部の高さは、初回17.2±6.2㎜、3か月後20.7±5.6㎜であり、膀胱頚部の位置は、初回94.6±6.2㎜、3か月後96.1±6.4㎜と高さ、位置ともに上昇したが有意な差を認めなかった。尿道括約筋の厚さ、面積および尿道支持構造については、現在、画像解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
被験者から研究参加における新型コロナウイルス感染症に対する不安や相談等があったことや、感染予防対策のため外出制限、画像解析施設の利用を控えたためである。
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今後の研究の推進方策 |
大殿筋収縮運動を3か月間継続できた23名と 1か月以上 2か月まで継続できた10名を加え33名を画像解析の対象とする。骨盤底の形態を評価するためのMR画像解析において、尿道計測(尿道括約筋の厚さ、面積)、膀胱頚部の弛緩の程度、膀胱頚部の膣の形状、左右肛門挙筋の厚さ、左右肛門挙筋間距離を計測する。初回を初期値とし、1か月ごとの値を比較する。 大殿筋収縮運動の難易度調査の集計・解析から継続のための要素を明らかにし、「大殿筋収縮運動」に関する視聴覚教材作成にいかす。 以上から、産後の尿漏れ有症者に対する大殿筋収縮運動の有効性を科学的根拠とともに明確にし、誌上報告する。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由は、予定していた学会参加にできなかったこと、女性の尿漏れ予防のための簡便な運動方法である「大殿筋収縮運動」に関する視聴覚教材の作成ができなかったことにより繰越金が生じた。 使用計画は、研究結果の誌上発表や地域女性の健康教育に活用するための「大殿筋収縮運動」に関する視聴覚教材作成に充てる。
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