本研究では、養護教諭の「論理的思考力の不足」と「振り返りが難しい環境」に着目し、養護教諭の緊急度・重症度判断を導く思考プロセスの問題を解決するための新たな養護教諭を対象とした研修プログラムを開発することを目的としている。 2023年度は、2021年度に行った現職養護教諭を対象にした「仮説演繹法による臨床推論」の研修プログラムの評価と課題を明らかにし論文を学会誌に投稿した。 さらに、研修プログラムで用いた「臨床推論タイプ分析」をより簡便に行うために、スマートフォンやタブレットで利用可能なウエブアプリ(http://clinicalsupport.qammer.site/)を作成した。「臨床推論タイプ」とは養護教諭の学校救急処置における思考プロセスの特徴を仮説形成の有無,仮説検証の有無,仮説検証の内容,意図的な情報収集の有無から分類したものである。臨床推論タイプは「タイプⅠa仮説検証型」「Ⅰb仮説形成ありの子どもの言動優先型」、「タイプⅡ直感型」,「タイプⅢかくれ仮説検証型」,「Ⅳa網羅的情報収集型」、「タイプⅣb仮説形成なしの子どもの言動優先型」の6種類から成る。 作成したアプリは利用者が保健室対応の場面を記述した「振り返りシート」の各項目について、Web画面に出てくる質問にタッチし回答することで、その場面で用いた臨床推論タイプが分析できるものである。アプリにはこの分析ツールの他、臨床推論タイプの説明、臨床推論モデルパターンの電子書籍も掲載した。
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