研究実績の概要 |
本研究の特色は、女性の母親となる精神的適応過程は、母親となる自己を構成する過程であると捉え、これまで明らかにされていない適応過程における対処(自己調整)に焦点を当て、妊娠期における母親の対処特性と自己の再構成の状況を明らかにし、産褥期で浮き彫りになると思われる「母親となる自己像の形成状態」との関連を検討している点である。近年、実母による虐待や子を愛せない母親の問題が注目されており、この問題への看護アプローチへの貢献を目標としている。 「母親となる自己の再構成」を指標に、妊娠後期から産褥期における心理的対処と影響要因との関連を明らかにする目的に、ローリスク初産婦30名を対象に縦断的調査を行う。3つの測定尺度(Stress Coping Inventory, Japanese Prenatal Self-Evaluation Questionnaire, 対児感情評定尺度)による質問紙調査を妊娠後期に行い・3回の面接調査(妊娠後期・産褥2週間・産褥1ヶ月)を行う。面接データは質的記述的に分析し、妊娠期の心理的対処状況と産褥期の対処状況との関連、影響要因の関連を分析する。3つの測定尺度は分析の解釈に用いる。 現在データの収集途中であるが、妊娠期の分析から、情報収集はインターネットを頼りにしている傾向があり、「周囲と関わるのが恥ずかしい」「自分で調べて努力する」「自分で解決する」との回答が、これまでの研究者が調査してきた先行研究と異なる特徴として確認されている。また、YOU Tube等の映像情報を頼りにしており、映像情報がもたらす影響について分析する必要性が示唆される。自分の母親像を想像できず母親になってから考えるとの回答傾向は変わらないが、自己の母親像を語る対象者は実母とよく語る時間を持っていることも示されており、自己の母親像の形成に実母との関係が影響することが示唆される。
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