研究実績の概要 |
女性においては妊娠や出産が肥満の契機であることや30歳以降は,加齢にともなう筋萎縮と筋力の低下が始まることから,30歳以上の女性を対象に妊娠期~産後1年の時期において,骨格筋のなかでも大きな割合を占める下肢の筋力・筋肉量の維持・増加による基礎代謝の上昇を目的に,妊娠期から継続して実施できる筋肉維持の支援プログラムを作成の基礎資料として,30歳以上の妊婦を対象とした妊娠中期~産後1年の下肢筋力・筋量の変化を測定した。 【方法】近畿圏内の政令都市の産婦人科医院にて妊婦健診を受診中の妊婦を対象に健診時に,InBody270を用いて,生体電気インピーダンス法(BIA法)により下肢筋肉量などの体成分の測定と属性,活動量について質問紙調査を行った。 【結果】対象は,妊娠6~40週の妊婦158名(初期30名,中期56名,末期72名),平均年齢31.3歳,初期の体重54.4 ±7.0Kg,右下肢筋肉量.7±0.8Kg,左下肢筋肉量5.7±0.7Kgであった。中期の体重5.6±6.9Kg,右下肢筋肉量5.7±0.8,左下肢筋肉量5.7±0.8,末期の体重59.9±8.7Kg,右下肢筋肉量6.0±0.9,左下肢筋肉量5.9±0.9であった。下肢筋肉量について妊娠時期による比較を行ったところ,有意差はなかった。SMI(四肢の筋肉量を身長の二乗で割った値)は,初期5.9±0.5(4.5-6.6),中期5.9±0.5(4.9-6.7),末期6.2±0.7(4.6-7.9)であった。 【考察】下肢筋肉量は3.8~8.6Kgと個人差が大きいことやSMIはサルコペニアAWGS(アジア)の診断基準である女性5.7未満の骨格筋量の低下を示す者がいることが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、実態調査の継続とデータ解析を行う。同年代の出産経験未経験者を対象とした実態調査も平行して行うと共に,妊婦と非妊婦との比較により、妊娠期や育児期の女性の特徴を明らかにする。さらに,筋力・筋肉量に変化のみられる時期や関連要因を多角的に検討する。それらの検討の後, 妊娠期や育児期の女性の生活を考慮したプログラム試案の作成に取り組む。
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