研究課題/領域番号 |
18K10413
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研究機関 | 神戸女子大学 |
研究代表者 |
田村 康子 神戸女子大学, 看護学部, 准教授 (80326305)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | モロッコ / 産痛緩和ケア / 助産師 / 助産師基礎教育 / 実践コミュニティ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、産痛緩和ケアに関する助産師の実践コミュニティ形成を基盤としながら、産痛緩和ケア実践能力養成に関する基礎助産師教育における教育モデル開発を行うことである。 2018年度は①モロッコにおける産痛緩和ケアにおける助産師教育や連携機関との連携の実際と課題を明らかにすること、②モデルを評価する指標や教育モデル案開発に関する文献検討を行うこと、③助産師教育に関する関係者間の実践コミュニティの形成を図ることを主な計画とした。①および③について、2019年2月にモロッコに渡航し保健省人材局および人口局、3府県、4校の助産師養成機関を訪問した。教員への聞き取りから産痛緩和ケアを認識しているがどのように指導したら良いか分からず実践されていないことが明らかになった。最終学年の3年生の助産師学生6名へ聞き取りを行った。介助した分娩件数は3年間の教育課程において25~150件だが、産痛緩和ケアを全く実施していないことが明らかになった。実習施設の地域保健センターを管轄する府県の保健省支局の母子保健担当者からは、実習に関する情報を教員と共有する体制はなく、教育内容に関する連携機関の関係は希薄であることが明らかになった。これらの訪問により意見を交換し、課題意識を共有し、研究者との関係性を形成するための第一歩とした。モロッコと関係の深いフランスで、自然分娩を助長するケア実践を地域で行う助産師の実践を視察し(2018年10月)、助産師の実践コミュニティ形成への可能性を検討している。また、先行研究「モロッコにおける助産師を対象とした産痛緩和ケア教育プログラム」に参加した助産師(1名)を訪問することができ、ケア継続に関する語りを聞き、プログラム終了後の継続実践について示唆を得た。②についてコミュニティや看護教育に関する文献検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モロッコにおける助産師基礎教育の現状に関する課題はおおむね明らかにすることができた。訪問した3府県は2016年にJICA短期専門家として赴任した際に助産師基礎教育について共に検討した地域であり、助産師養成機関の研究への理解も良好であった。コミュニティ形成の評価の指標や教育モデルに関係する評価の指標を検討するための文献検討の進捗がやや遅れ気味であるが、全体として現時点での進捗状況はおおむね良好である。 しかし、2019年2月の渡航で、モロッコ国家の予算の事情から2018年度以降の保健省管轄の助産師養成校の入学生受け入れを全国的に中止しているとのことを知った。高等教育省管轄の大学1校のみが2018年度の入学生を受け入れている状況である。本研究は今後、助産師学生を対象としながら研究をすすめていく予定であり、モロッコ国の予算措置による影響は大きい。計画実施をどのように進行させるか、今後、現地の状況もみながら検討する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
文献検討をすすめると同時に、現地での研究手続きを進めるため、神戸女子大学の人間を対象とする研究倫理委員会での承認、モロッコ国保健省における研究申請を今年度前半にすすめる。 研究対象地域を選定し、日本とモロッコでの研究倫理申請が終了すれば、まずは助産師養成学校の教員、実習施設の助産師、実習施設を管轄する保健省支局の母子保健専門官を対象として、産痛緩和ケアの概念を共有する必要がある。既に開発した助産師対象の教育プログラムおよび2016年に発行したaide memoire(教員向け出産準備教育ガイドライン)を基盤に本研究で用いる教員用の学生指導用ガイドラインを作成して、研究実施準備を整える。この作成は、研究対象地域の教員と意見交換しながら進め、産痛緩和ケアコミュニティ形成の構築を図る。これらのことを進めながら、2019年2月モロッコ渡航時に得た情報から、2018年度より保健省管轄の助産師養成学校の新入学者を中止しているため、2019年度の状況を確認し、学生への教育モデル案の作成、プレテストの実施について、計画修正の必要性を現地教員と共に探る。
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次年度使用額が生じた理由 |
関連図書の購入が少なかったこと、およびICレコーダーやスキャナなどの備品の購入を2018年度に実施しなかったため2018年度に使用できなかった助成金が発生した。2019年度に計画的に予算執行予定である。
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