研究課題/領域番号 |
18K10419
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
津田 朗子 金沢大学, 保健学系, 教授 (40272984)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 性の多様性 / 看護教育 / LGBT / SOGI / 子ども |
研究実績の概要 |
近年、性的マイノリティに対する関心が高まり、看護分野においても性の多様性をふまえた教育が求められている。しかし、看護教育の中で性の多様性がどのように教育内容に反映されているのかを系統的に調査した研究はみられず、看護学生自身の多様性を配慮した教育環境の保障についても、十分な検討はなされていない。そこで、性の多様性をふまえた看護教育の在り方を検討するために、2018年度は、教育を受ける学生側の性的マイノリティ(以下マイノリティ)に対する意識を調査した。その結果、マイノリティと関わった経験のある者32%、情報を見聞きした経験がある者77%、学校で学んだ経験がある者58%であった。また、マイノリティに関する知識の正答率は20~50%で学年による差が見られた。さらに、マイノリティへの関心が高い一方で、学生の20%はマイノリティへの偏見があるとの意識を持っていた。このような学生の意識は、過去の経験や知識の程度、関心の高さ、心理的距離感、受容度と関連していた。しかし、学校で学んだ経験との関連はみられなかった。以上から、学生の意識を発展させていくためには、単なる知識だけでなく、学生間でお互いの意識や考えの違いを共有し尊重しあえる機会を提供する教育内容・方法の工夫が必要であると示唆された。この結果をもとに、2019年度は全国の看護系大学の教員を対象に、性的マイノリティや性の多様性に対する意識及び教育に関する実態調査を実施する。学生の調査結果をふまえ、教育方法やねらいに対する教員の意図・意識をより具体的に調査できるよう、調査項目を追加、表現を工夫して実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究を計画した段階では、初年度に教員を対象とした教育に関する実態調査を行うことを予定していたが、教育の実態を詳細に調査するためには、まず学生側の教育ニーズを明らかにしておく必要があると考えた。そこで予定を変更し、2018年度は学生の意識調査を実施した。この結果を活用して、2019年度は看護系大学の教員を対象とした全国調査を実施予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1.看護系大学の教員を対象とした全国調査:対象は全国の看護系大学(国立44、公立49、私立183 計276) の看護教員で、各大学宛に郵送で調査用紙を複数部ずつ配布し、分野別回答(基礎、成人、老年、精神、母性、小児、地域など)を所属長に依頼、個別郵送法により回収する。調査内容は、性の多様性や性的マイノリティに関する看護教育(授業科目、内容、ねらい、教授方法、時間数 、課題など)、意識(看護教育を実施するうえでの困難、葛藤、疑問、体験など)、学生の学習環境に関する配慮等とする。調査項目は研究者の所属する他分野の教員およびジェンダー論を専門とする研究者らと十分な検討を行い作成する。8月までに所属機関の倫理審査委員会の承諾を得て10月頃の実施を予定している。 2.協力を得られた教員からのヒヤリング調査(インタビュー調査) :上述の調査で回答のあった大学のうち、承諾を得られた大学の教員を対象に面接法による聞き取り調査を実施する。承諾を得てICレコーダーで録音、逐語録を作成し、内容を質的に分析する。 3.結果の分析:上述の調査結果の分析し、性の多様性をふまえた看護教育の在り方と、性の多様性をふまえた看護教育の実現に向けた課題を検討する。当事者である学生や教職員の意見が十分反映されるよう、県内外のLGBT民間団体や大学のサークルの学生などにも加わってもらい検討を重ねる。 4.関連学会および論文による成果発表
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定を変更し、実施予定であった全国調査を実施しなかったため、全国調査にかかる郵送通信費、会議費、および人件費を執行しなかったことにより未使用額が生じた。2019年度は全国調査を実施予定であり、調査実施にかかる郵送通信費、会議費、データ整理にかかる人件費として使用予定である。また、2018年度に実施した学生を対象とした調査の結果を学会および論文にて発表予定であり、そのための学会参加費、交通費、英文校閲費として使用予定である。
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