研究課題/領域番号 |
18K10428
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研究機関 | 医療創生大学 |
研究代表者 |
古谷 佳由理 医療創生大学, 国際看護学部, 教授 (90222877)
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研究分担者 |
小澤 典子 慶應義塾大学, 看護医療学部(信濃町), 講師 (20821408)
平賀 紀子 茨城県立こども病院(小児医療・がん研究センター), 小児医療研究部門, 研究員 (40827581)
福島 敬 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (30323299)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ヘルスリテラシー / 小児慢性疾患患者 / 自立促進 |
研究実績の概要 |
医療の進歩により小児期発症の疾患をもつ患者の多くが成人期を迎えるようになった。成人への移行期における重要な支援のひとつに子どもの自立支援があるが、成人移行がスムーズにいかないという報告は少なくない。その要因の一つが親の子どもへの過保護的なかかわりだと指摘されているため、我々は子どものヘルスリテラシー(以下、HL)に見合った保護者の関わり、またHLの獲得を促進する保護者の関わりが必要であると考えている。今年度は支援の一助を得るため、小児慢性疾患患者の保護者が子どものHLをどのようにとらえているのか、移行支援に関する準備状況を明らかにするために実施した質問紙調査の分析を行った。 10歳から19歳の小児慢性疾患患者の保護者179人のうち約60%の保護者が、子どもの病気と治療について子どもと一緒に話し合っており、子どもたちが小児科から成人科に移るときがいずれ来るだろうと、移行を受け入れていた。保護者による成人移行支援実施率は全般的に低いものの、子どもの年齢と保護者による支援の実施には正の相関があり、子どもの年齢とともに支援が進んでいるという強みも見出されている。一方、移行に導けるような情報収集や、子ども一人で外来診療をさせることなどの支援を実施できている親は20%未満であった。さらに、「子どもに自分の病状や治療上の健康状態を記録することの勧め」「経済的支援に関する情報収集」「子どもが成人した後の公的支援や医療保険の利用」などは、がんや血液疾患を持つ子どもの親よりも糖尿病や心血管疾患を持つ子どもの親の方が積極的に実施しているという、疾患による差異も明らかとなった。 これらの結果から、子どもの移行をサポートする親の準備は、子どもの疾患によって異なっており、その要因を確認する必要があると思われる。また、親の準備状況は十分には進んでおらず、移行準備に関連する親への介入の必要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
COVI-19 の影響を受け以下のような状況にあり、研究に遅れが生じている。 ・外来での調査開始時期を研究者間、研修依頼施設と調整を行いながら、調査を開始したため、調査開始時期が当初の予定を大幅に遅れたため。 ・外来受診患者の人数制限や電話診療の導入により、外来受診患者が激減し、研究対象者への質問紙の配布に時間を要しているため。
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今後の研究の推進方策 |
小児慢性疾患患者(子ども自身)の移行準備状況に関する現状の結果をまとめつつ、親と子の差異を分析し、介入プログラムの作成に着手する予定である。 当初の計画では質問紙調査の結果を踏まえ介入プログラムを作成しつつ、介入を行い、介入前後の評価をしながら介入プログラムを洗練してく予定であったが、 COVI-19 の影響を受け、今年度の対象者への介入研究を実施することが困難であると判断し、研究計画を変更するに至った。 質問紙調査の結果や先行研究をもとに、介入プログラムを研究メンバーで検討することは継続しつつ、慢性疾患を持ち成人移行をした患者および成人移行期支援を行っている医療者に対するインタビュー調査をオンラインにて実施したいと考えている。インタビュー内容は質問紙調査の結果を踏まえた上で、検討していく。 特に医療者に対しては、「成人移行期について―医療者が期待する準備状況―」についてもヒアリングを行い、当事者と保護者を対象とした質問紙調査結果から導き出された現状と医療者の期待を合わせて分析を行い、介入プログラム内容に反映させ、ヘルスリテラシー向上および自立促進の方策に繋げたいと考えている。 また、本研究結果から得られた知見を基に計画し、令和5年度から新たに資金を獲得した「小児慢性疾患患者の自立を目指した親子を対象とした継続的な介入プログラムの検討」を並行して実施していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度も令和3年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症蔓延防止措置により、外来受診者の抑制で調査対象者が減り、データ収集に時間を要したこと、学術集会が軒並みオンライン開催になったこと、海外渡航に制限が加わったことなどにより、当初の予算計画を大幅に変更せざるを得ない状況となったためである。 実施計画をさらに1年延長し、学術集会への成果発表ならびに医療者に対しては、「成人移行期について―医療者が期待する準備状況―」についてヒアリングを行い分析を行う予定である。
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