小児期発症の慢性疾患をもつ患者の成人期医療への移行期支援を検討するために、患者や家族、看護師を対象に面接調査を実施してきた。患者や家族では、慣れ親しんだ小児医療から移行することに不安を抱く傾向があった。また、看護師では、移行期支援の必要性を認識しながらも介入することの難しさを感じていた。これらの結果も踏まえ、小児期発症の慢性疾患患者の成人期医療移行支援に関する看護師の認識や実際を明らかにし、期支援のあり方や具体的な支援内容・方法を検討するために、小児期発症の慢性疾患患者とその家族に関わる部署に勤務する全国の看護師を対象に質問紙調査を実施した。回答者は247名であった。自部署において、移行期支援を進める必要があると思う患者がいると回答し者は、約80%であったが、移行期支援を実施している者は30%にも満たず、支援が十分に進んでいない現状が明らかとなった。また、自部署に移行期支援に関するマニュアルやガイドラインが「ある」と回答した者は10%程度、移行期支援を専門とする看護師が「配属されている」と回答した者は、わずかに1.6%で成人期医療への移行を円滑に進めるため様々な側面からの支援体制づくりが必要と言えよう。移行期患者や家族に移行期支援を進めるにあたり、「自分の疾患や症状を理解する能力」「自分の治療内容や治療方法を理解する能力」などを身につける必要性を回答者の75%を超える者が認識しており、患者が早期からこれらの能力を身につけ、高めるための看護実践が重要である。しかし、これらの能力を獲得するための看護実践の程度として、「実施している・どちらかといえば実施している」と回答した者の割合は65%前後であった。具体的な看護実践としては、患者に対する疾患教育や疾患に伴い直面する様々な困難を乗り越えていく力であるレジリエンスを高める支援も有益と考える。
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