本研究は、保育所等で働く看護職が、保育職とともに子どもの健康支援者となるために必要な能力を向上させるための学習プログラムを開発し、看護基礎教育終了後の教育システムのあり方について検討することを目的としている。 1年目に実施した文献検討、実態調査、グループインタビュー調査などから、2年目に学習プログラムに必要な要素を抽出し、学習プログラムの枠組み及び具体的な学習プログラム内容の検討を行った。3年目は、①子どもの健康を支援する力、②子どもの権利を擁護する力、③組織の役割を協働して遂行する力、④自己を教育・研鑽する力、の4つの構成要素を軸に、新任(レベルⅠ)、中堅(レベルⅡ)、ベテラン(レベルⅢ)の3段階のレベル別に分け、それぞれのレベル目標、行動目標、学習内容と学習方法、実践能力の評価、及び学習のための参考資料などを検討した。4年目は、学習ガイドブックの研修内容をもとに研修会を開催し、学習内容や方法の適切性を検討するとともに、保育所看護職として経験のある有識者から助言を得た。これらの結果を統合し、「保育所等で働く看護職の看護実践~キャリア形成に向けた学習ガイドブック(以下、「学習ガイドブック」と略す)を完成させ保育所等で働く看護職に配布した。 令和4年度は、学習ガイドブック活用による評価研究を進めるにあたり、経験年数別の学習到達度、学習に影響を及ぼす要因等について実態調査を行った。660名の回答者をレベル別で分析した結果、レベルⅠからⅡにかけて習得する知識や技術とレベルⅡからⅢにかけて習得するものが明らかになった。また、どのレベル間にも差がなく習得度合いが低かった項目は、子どもの発育・発達の評価、防災・災害対策、倫理的課題などであり、現場での経験と自己学習だけでは学習が不十分の可能性が示唆された。今後は、これらの結果も踏まえ、より効果的な学習支援とその評価を進めていきたい。
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