研究実績の概要 |
本研究は、2018年から2021年までの4年間のプロジェクトである。研究の目的は、多様な文化的価値観を持つ人々の保健医療ニーズを明らかにし、その多様性を尊重したケアができる保健医療人材の教育プログラムを開発することで、将来的な健康格差の解消を目指すことである。 2021年度(4年目)は、2020年度までの研究の成果を国際学会(Sigma 32nd International Nursing Research Congress,2021)や海外の学術雑誌(Public Health Nurs,2022)に発表した。また、二つ目の調査である保健医療職のうち2種(看護師・助産師)を対象とした調査を実施した。看護師と助産師への調査では、一次医療を提供する診療所に勤務する3年以上の臨床経験を持つ職員より、129名の看護師(101名を分析対象)と157名の助産師(147名を分析対象)の協力を得た。 主な結果として、両者とも約8割が在日外国人への対応経験があるにも関わらず、多様な文化や対応についての教育機会は1割程度といずれも統計的に有意な差は見られなかった。英語によるコミュニケーションのレベルは、助産師は看護師よりも有意に高かった。在日外国人に対応する際の態度において、助産師は「文化的な違いの認識」「文化的違いへの柔軟な対応」「継続学習への意欲」において、有意に高く積極的に対応していることが明らかとなった。 加えて両者ともに文化的価値観の多様性を尊重するための教育機会が不足し、臨床経験を基に知識の付加や対応方法を工夫していることが明らかになった。さらに、教育プログラムにおいては、共通して強化が必要な内容もあるが、職種間での教育ニーズの違いも存在することから、職種特有の内容も必要であることが示唆された。この課題については、2022年度に新たに採択された科研にて引き続き検討する予定である。
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