研究課題/領域番号 |
18K10487
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研究機関 | 聖路加国際大学 |
研究代表者 |
岡田 明子 (蛭田明子) 聖路加国際大学, 大学院看護学研究科, 准教授 (80584440)
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研究分担者 |
太田 尚子 静岡県立大学, 看護学部, 教授 (50285053)
堀内 成子 聖路加国際大学, 大学院看護学研究科, 特命教授 (70157056)
片岡 弥恵子 聖路加国際大学, 大学院看護学研究科, 教授 (70297068)
鶴若 麻理 聖路加国際大学, 大学院看護学研究科, 教授 (90386665)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 人工死産 / 妊娠の中断 / 周産期喪失 / ペリネイタルロス / 支援ガイド |
研究実績の概要 |
2021年度はまず、昨年の調査データから支援の満足度に影響する要因を探索し、支援の充実のために何が求められているかを検討した。 入院までの支援に対する満足度には、告知の際の医療者の気遣いのある対応、人工死産の決定や、決定後の出産までの話し合いの機会の有無が関連していた。人工死産を決定してから出産までの話し合いの機会の有無は、出産の体験の満足度にも関連がみられた。入院中、出産後の子どもとの面会について、口頭で説明があるだけでなく冊子と口頭で説明があること、一度でなく何度でも面会の希望を訊いてもらえることが、高い満足度に関連していた。また、退院前の冊子及び口頭での情報提供は、高い満足度と関連がみられた。一方、人工死産ゆえに出産だけのために転院となった場合に、最も入院中の支援の満足度が低く、入院中先のような支援を受けていない人が多かった。産後の支援については、産後健診で身体の状態確認だけでなく、話を聴いてもらえる機会のあることが高い満足度と関連していた。 これらの結果と2020年度のインタビューの結果を合わせて、妊娠の継続が難しい状況に陥った時から人工死産のその後まで、いずれの時期においても両親が求めている支援の背景には「医療者に話を聴いてもらえること」が必要不可欠な要素であることが示唆された。産むか産まないかの決定の支援だけでなく、どのように出産し、見送るか、一連の過程において、常に両親は迷い、揺らいでいる。そのような中で希望を話し合う機会があり、希望をかなえることができたことは、支援を通して人工死産の経験の捉え方に違いをもたらすことが示唆された。 人工死産の支援の充実のためには、両親の話を聴き、希望を引き出すスキルの育成が課題であり、両親と医療者のコミュニケーションを促進し、希望の引き出しにつながるツールの開発が必要であることを確認した。 この過程を経て、ツールの素案まで作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、支援の充実のために、医療者が支援をする際に役立つガイドブックを作成する予定であった。しかし、調査の結果を受けて、人工死産の当事者である両親に圧倒的に情報が不足していることや、医療者とコミュニケーションをとることの難しさ、医療者に対する遠慮から、両親は自分の希望を言い出しにくいことが分かった。そのため、妊娠の継続が難しく、中断を考える時点で両親が手にできるツールの作成も必要と考え、その作成を優先した。よって、医療者が活用できるガイドブックの作成について、遅れている。この背景には、COVID-19の影響があり、医療者にインタビューを実施し、ワークショップを開催する計画の実行が難しかったことも影響している。
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今後の研究の推進方策 |
作成中の両親向けのツールを完成させるとともに、医療者向けの支援のガイドブックも作成する。試作段階で医療者と両親と双方にヒアリングを行い、コメントをもとに修正し、最終版とする。 両親向けのツールに関しては、作成したツールが医療者と両親のコミュニケーションを促進するものとなりうるか、最終版により当事者である両親、および医療者から評価を得る。 医療者向けの支援のガイドブックに関しては、ワークショップを行い、医療者から評価を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
看護者へのインタビュー、及びワークショップ開催ができなかったことにより、謝金および開催にかかる人件費や諸経費が発生しなかった。また、ツールを作成し、外部に発注するところまでに至らなかったため、その作成費用も2022年度に持ち越しとなった。 持ち越し分について、2022年度、2種類のツールの作成費用、およびワークショップの諸経費や協力者への謝金、また、研究成果の公表に使用する予定である。
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