本研究の目的は、マタニティ・ヨーガによる産褥期のうつの低減効果に焦点を当て、生理的指標および心理的指標を用いて、マタニティ・ヨーガの短期効果と長期効果を明かにすることである。また、産後うつを低減できるヨーガの適切な実施回数を明らかにすることである。 研究デザインは、マタニティ・ヨーガ教室に参加する妊婦150名を対象とした1群事前テスト・事後テスト設計である。ただし、うつ症状の変化が妊娠、分娩、産褥経過によるものでないことを明らかにするために、ヨーガ教室に参加しない妊婦150名を対照群とした。 新型コロナ感染拡大の影響で、研究プロジェクトの3年目以降5年目までヨーガ教室が開催されておらず、新型コロナ感染拡大以前にデータ収集できた82名をヨーガ群とした。対照群のデータ収集は、ヨーガ群と出産様式、出産回数、退院前後の母乳栄養の状況、年齢でマッチングして164名からデータ収集を行った。 測定項目は、自律神経機能と抑うつ症状である。自律神経機能は、ヨーガ前後の心電図R-R間隔、周波数分析のLF/HF、HF値を解析した。抑うつ症状はエジンバラ産後うつ病質問紙(Edinburgh Postnatal Depression Scale: EPDS) を用いた。ヨーガの効果は、短期効果を自律神経機能で、長期効果を抑うつの変化で評価した。 ヨーガの短期効果では、LF/HF比は、妊娠週数とともに増加し、ヨガ後に減少する傾向があった。ヨーガの長期効果では、ヨーガ群と対照群を比較すると、抑うつに差はないが、妊娠中に心配があると、ヨーガ教室への参加回数が増え、妊娠中に心配があると産後の抑うつが強くなることが示された。
|