研究実績の概要 |
高齢期には,加齢や疾病などにより身体・精神・社会的機能が低下しやすく,自尊感情の低下,良好な生活習慣維持に対する意欲も低下することがある。近年,高齢者が感情を日記に書くことの効果として,脳活動の賦活による認知機能の維持・改善,不安・ストレスの解消が示唆されている。しかし,その報告は限定されている。本研究では,地域在住の高齢者と青年期女性を対象に,日記への感情の表現により,心理状態や生活リズムに変化がみられるかを分析した。研究方法は,研究参加に同意が得られた対象者に,連続した5日間,日々の出来事並びにその日あった良かったこと(感情)を簡潔に記述してもらい,日記記述の前後で,質問紙調査への回答を依頼した。調査項目は,WHO-5精神的健康状態表,簡易生活リズム質問票,日本語版Herth Hope Index等であった。分析の結果,日記記述期間終了時,若年層においてWHO-5得点が上昇傾向にあった。高齢層では,希望得点が有意に上昇していた。日記記述前後における生活リズム同調得点に有意な変化はなかった。その他,自由記述として,楽しかったこと・嬉しかったことに気付くことができた,明るくポジティブな気持ちになったという回答があった。日記への感情の表現により,生活上のちょっとした出来事や気づきがポジティブな感情を生じさせる傾向がみられた。簡潔な日記記述でも,対象によっては精神的健康度や未来への展望を高めるきっかけとなり得ることが示唆された。
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