研究課題
研究を開始後、英国が実施しているASDを有する人への支援内容の実際を訪問し、医療・福祉、教育の現場での支援内容を視察した。診断前にニーズに応じた支援とインクルーシブ教育が実践されていた。精神科病院を退院後は集中的な回復施設で看護師が支援を実施していた。コロナ禍のため、訪問調査は実施できず、最終年度は、まず公認心理士と訪問看護を実施している精神看護専門看護師の講演会を実施した。その後、精神科訪問看護に関わっている支援者を対象に多職種型教育プログラム6回を2日間に分けて実施した。参加者は21名で選択基準を満たさなかった3名を除外して、同意が得られた14名を調査対象とした。職種は看護師、精神保健福祉士、作業療法士、言語聴覚士であった。プログラムの概要は医師による「ASDに関する知識」、「使用される薬物療法」の講義、公認心理士による「ASDの特徴とコミュニケーション」、精神保健福祉士による「家族支援」、「就労支援」、アウトリーチを実施している看護師による「困った時の対応」だった。調査時期はプログラムの前・後、1か月後であった。その内容はASDに関する知識、在宅看護の質を自己評価、学習意欲を問う質問だった。調査の結果、プログラム直後の回答は12名で、1か月後は6名だった。プログラム前後の知識はプログラム前23±11.61で、直後は32.54±8.18と有意に増加し(p=.008)、1か月後も知識は維持されていた。在宅看護の質自己評価尺度得点は前後、1か月後ともに有意な差は認めなかった。また、学習意欲を問う質問得点にも有意差はなかった。学びたい内容としては、「障害をもつ家族支援」、「支援サービスと支援者の連携」、「問題行動への対処」、「言語的コミュニケーションがとれない場合の対応」などが挙げられた。