研究実績の概要 |
本研究課題である在宅で起こりやすい医療処置に付随するトラブルの検討を図るため,今年度は,研究対象である新卒訪問看護師に対して、就業していくうえでの看護実践上の困難性について検討した。 調査対象者は,スノーボール抽出法にて協力者を集め,同意を得た新卒訪問看護師に半構造化面接を行った.データの分析は,内容分析の方法に準拠し,2名の分析者にて意味内容を解釈した. 対象10名の新卒訪問看護師の分析結果,3カテゴリが抽出された.【アセスメントの困難性】は,決められた枠組みがない中で情報を収集,それらを分析判断するプロセスが可視化されず,療養者の状態を見極めることに困難性を感じていた.【看護技術の困難性】は,日常生活援助技術の応用,実践経験が少ない中での診療に伴う看護技術への不安,また,療養者との関係性に戸惑いを感じていた.【協働していくことの困難性】は,接遇への自信のなさ,報告・連絡・相談に困難性を感じていた. これら各困難性に対して支援策を検討した.【アセスメントの困難性】は,訪問看護アセスメントの標準化を図ること,実践の場面を再現した演習を反復練習すること.【看護技術の困難性】は,看護系教育機関や地域の看護研修施設が,看護技術の訓練を希望する新卒看護者に対する受け皿となること,技術の原理原則がわかる教育内容へと変革が必要なこと【協働していくことの困難性】は, 相談しやすい職場環境づくりと連絡手段の確立,また,演習などのロールプレイを通じて相手の気持ちを察する力を体験し,社会人基礎力を育成していく支援策が考えられた. なお,【看護技術の困難性】における診療に伴う看護技術,いわゆる医療処置において,新卒訪問看護師はトラブルと認識するまでの経験を現場でしていないことが明らかとなった. ただし,経験を積み重ねることができない不安の訴えが多く聞かれた.
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